ロシアのデジタル化: 認識と現実

このことを念頭に置いて、中東欧およびロシアとCIS (独立国家共同体)地域に焦点を当てたグローバルビジネスおよび新興市場に関するアドバイスと情報を提供するコンサルタント会社であるDT-Global Business Consultingの社長であるダニエル･ソーンリー博士に話を聞きました。ダニーは3冊の著作を出版しており、ロシアの経済史に関する世界有数の権威であり、元国連の東西問題の専門家です。彼がロシアのデジタル軌道をどのように認識しているか、そしてそれが他の世界とどのように比較されているかを知りたいと思いました。

以下のハイライトでは、ダニーと私はロシアのデジタル化の現状と、変革を目指すロシア企業の動機に取り組んでいます。
 

ロシアのデジタル化は他の世界と比べてどうですか?

ゲナディ: ロシアは、数学、ソフトウェア制作、人工知能(AI)の開発に多大な専門知識を持っています。しかし、大きな進歩が見られる一方で、デジタル技術への投資に関しては、依然として他の国に遅れをとっています。ロシアはGDPの2%をこの領域に費やしていますが、米国では6%、西ヨーロッパでは4%です。

それで、ダニー、ロシアのデジタル化の発展を見るとき、世界の他の地域と比べてどう思いますか?

ダニー: 私はこれについて永遠に話すことができます。ロシア連邦政府は、デジタル化に関して「悪くない」とマークされると思います。例えば、ロシア連邦税務局は、リアルタイムの税データを使用して納税者との透明性を高める、高度にデジタル化されていることでよく知られています。現在、多くの大規模なロシア企業もデジタル化しています。欧米からの堅実な投資が行なわれており、市場はますます進んでいます。ロシアがこれに関して原始的または後進的であるという考えはまったく正しくありません。

しかし、批判的に見るのであれば、ロシアの弱点は中小企業を支援し、インセンティブを与えることができないことが挙げられます。これはロシアの体系的な問題であり、COVID-19危機の際に特に差し迫った問題になっています。世界中の中小企業は、経済成長を推進するイノベーションの多くを開発する責任を負うことがよくあります。しかし、それらはロシア経済では十分に普及しておらず、GDPの23～27%を占め、雇用の同じ割合を占めています。西欧諸国と米国では、同じ測定値の55～58%を占めています。ここには改善の余地がたくさんあります。

ゲナディ: ロシアの企業をデジタルトランスフォーメーションに引き付けているのは何だと思いますか?

ダニー: ロシアのビジネスリーダに対する最近の調査では、75%の企業がデジタルトランスフォーメーションを使用して顧客関係を改善し、73%が内部の生産性とコストを改善し、52%が新しいビジネスモデルとオープンな収益源を開発したいと考えています。

B2BビジネスとB2Cビジネスの間には動機に違いがあります。ビジネスが消費者志向の場合、顧客との関係を改善するためにデジタルテクノロジを使用することに関心があります。顧客数の少ない製造メーカなどのB2Bビジネスを見ると、社内の生産性、コスト削減、業務の合理化を目標としています。推進要因には明確な組み合わせがあります。しかし、競争上の優位性を明らかにするための分析とビッグデータ、およびCOVID-19の進歩に伴って特に重要になっているリモートワークなどのテクノロジへの注目が高まっていることは確かです。 

ロシアではどのような技術が重要とされていますか?

ゲナディ: ロシアの企業が使用している特定のデジタルテクノロジについて詳しく話しましょう。私は、企業がデータを分析し、パーソナライズを使用して顧客体験を向上させることで、どのような利点にアクセスできるかを模索し始めているのを見てきました。また、AIと機械学習からどのような価値を引き出すことができるか、マルチクラウド戦略がどのように運用を強化できるかについても検討しています。これらの分野はどの程度重要だと思いますか? また、2020年にロシアの企業は他にどんなテクノロジを採用しているのでしょうか?

ダニー: これらの分野で重要な議論が行なわれていますが、多くの企業の焦点は通常異なります。最近の調査では、ビジネスリーダにどのテクノロジを利用しているかを尋ねました。ソーシャルメディアが最も利用されており、38%の企業がソーシャルメディアを広く使用していることがわかりました。モバイルテクノロジとアプリは34％が使用しており、30%はドキュメントのデジタル化に依存しています。

IoT、AI、高度なロボット工学、3Dプリントなどのより高度なテクノロジの採用は少なく、広く使用しているロシア企業は10%以下です。さて、それはあなたがロシア市場と多くの同様の国の現状を考えると大体あなたが期待するものです。しかし、私が驚いたのは、クラウドをコアビジネスオペレーションに完全に統合している企業がわずか37%しかないことです。これは、他の地域のビジネスよりもはるかに低いです。

ゲナディ:それは興味深い点です。これについてお客様と話すとき、お客様がプライバシーを心配していることがわかります。クラウドを活用したいという願望はありますが、組織のインフラの外部にデータを保存することのセキュリティとビジネス継続性への影響を懸念しているため、国際的なプロバイダが内部の生産データを分析することを望んでいません。そのため、内部プロセスを保護しながら、マルチクラウドアプローチが特定のビジネスニーズにどのように役立つかについてのガイダンスを企業に提供することがよくあります。
 

別の道

クラウドで見られるように、ロシアのユニークな運用環境は、特定のテクノロジの採用に課題をもたらします。アジャイルな中小企業よりも大企業に有利なGDPとインセンティブのバランスにより、デジタル化は、特にIoTやAIなどの高度なテクノロジが関係する場合、長いプロセスになります。

ただし、他のテクノロジの採用はすでに健全であり、政府と企業の両方で変革への意欲が高まっています。デジタル化への道のりはそれほど進んでいないかもしれませんが、ロシアがデジタル化に遅れているのではないことは明らかです。

私とダニーは、次のブログでロシア独自の課題がどのようにユニークなソリューションを求めているかについて議論しておりますのでどうぞお読みください。