ゴールデンバッチは最適なプロセス品質を特定

ゴールデンバッチ製造とは何でしょうか。Control Globalでは、ゴールデンバッチを「製品品質目標を満たした特定のバッチで記録された測定値の時間ベースのプロファイル」と定義しています。簡単に言えば、理想的なアウトプットを特定し、それを生み出した条件を再現するために製造工程を最適化するためのシステムです。

ゴールデンバッチを製造工程に適用すると、主に2つのメリットが得られます。

• コスト削減
• 収益増加

コスト削減は、主に歩留まりの向上により達成されます。歩留まりの向上は、資源の利用率の向上、廃棄物、計画外ダウンタイム、許容範囲外のプロセス条件、監査、リコールの削減によりもたらされます。収益の増加は、製品の品質と製造の一貫性の向上により達成され、市場での差別化を図ることができます。また、ゴールデンバッチはリードタイムを短縮し、顧客満足度の向上と市場への浸透を可能にします。

ゴールデンバッチのもう1つの利点は、導入が簡単で使い勝手が良いことです。多くの場合、ゴールデンバッチの初期プロファイルを構築するために既存のデータを活用することができます。ゴールデンバッチを導入した後は、データ駆動型の業務手順の基礎を築くことで、継続的な改善に焦点を当てた業務運営を正式化することができます。ゴールデンバッチは、最初は理想的な製造条件を特定するために過去のデータを使用する反応的なものですが、予防的な分析に向けて進むことができます。

一般に知られているように、ゴールデンバッチは食品&飲料業界のバッチ製造にのみ適用されるわけではありません。化学、石油&ガス、その他のプロセス産業において、ライフサイクルが成熟しているバッチプロセスであれば、理想的な候補となりえます。このプロセスでは、最終製品の品質と単純な因果関係を持つ、適度に一貫性のある製品投入を伴う安定したサプライチェーンが必要なだけです。

ゴールデンバッチは、3段階のアプローチで展開することができます。

1. 初期観察

• 主要な生産目標を特定
• 重要な成功パラメータ/規制上の制限を特定
• 関連する変数を設定
• 目標が現実的で達成可能であることを確認

2. ソリューションの導入

• デジタルインフラを構築(まだ構築されていない場合)
• データを取得
• ゴールデンバッチのプロファイルを作成
• ゴールデンバッチプロセスの導入

3. 継続的改善

• 生産変動の抑制
• 在庫管理の再構築
• 問題発見時間の短縮
• 機械学習の最適化
• 予測分析を作成

ゴールデンバッチのプロセスを示すために、世界的な食品&飲料メーカが「ゴールデン」トルティーヤを製造するケーススタディを考えてみます。このケーススタディでは、アプリケーションとトルティーヤの製造工程の説明だけでなく、各実施段階についても詳しく説明しています。

初期観察

ゴールデンバッチを適用するための最初のステップは、プロセスと理想的な生産品質のアウトプットを特定することです。重要な成功パラメータを調査して、関連する規制上の制限やコストなど、プロジェクトの境界と範囲を決定する必要があります。その他の重要な要素は、現在生産品質に影響を与えている変数を特定し、データをモニタするセンサやその他のツールがあることを確認することです。どちらも、現実的で達成可能なスケジュールを設定するために不可欠です。

トルティーヤメーカの場合、最初の分析で、同社のインフラにはデータを収集するためのツールがすでに備わっていることがわかりました。バッチ処理の成功を決定する重要な出力センサとして、せん断速度と粘度を測定するファリノグラフが特定されました。同社には、理想的なバッチのファリノグラフ値を決定する既存の研究がありました。このラインには、バッチの結果に影響を与える可能性のある55の測定可能な変数があると評価されました。

ソリューションの導入

実装段階に含まれるアクティビティは、過去のプロセスデータが利用可能かどうかによって異なります。履歴データが存在する場合は、ゴールデン･バッチ･プロファイルの構築を開始するために、そのデータをクレンジング、整理、および移行する必要があります。履歴データが存在しない場合は、ゴールデン･バッチ･データ･プロファイルを構築する前に、デジタルインフラを構築する必要があります。この場合、分析をサポートするための完全なデータ収集を確実に行なうために、追加の時間とリソースが必要になります。いずれの場合も、プロセスの入力とそれに対応する製品の品質に関する包括的なデータセットを構築し、それを分析することで因果関係を明らかにすることが目的です。この分析により、最終製品の品質に大きな影響を与える入力パラメータが大量に得られることになります。これらの結果は、企業の製造プロセスに関する専門知識と合わせて、製造プロセスを深く理解することができます。最終製品の品質に大きな影響を与える入力パラメータのみに焦点を当てることで、ゴールデン･バッチ･プロファイルの処理と最適化にかかる時間を最小限に抑えることができます。

トルティーヤメーカの場合、ラインのセンサが1年分の過去のパフォーマンスデータを収集していました。このデータを分析し、ファリノグラフの測定値に大きな影響を与える操作可能な変数のみに絞り込みました。そして、これら21の変数すべてを用いて、カスタム予測モデルを構築しました。

ゴールデンバッチ最適化アルゴリズムは、目標とするファリノグラフ値を達成するために「利用可能な最善の」変数の組み合わせを決定しました。この新しい洞察は、トルティーヤを最も最適に製造するために、製造工程を変更する理由と方法を同社に示しました。

ゴールデンバッチを適用した結果、このメーカには次のような良い結果がもたらされました。

• 現在のバッチ式モデルから最適化されたゴールデンバッチ式モデルへの誤差を72.7%低減
• 製品品質の中央値で6.6%向上
• 最低品質の最終製品の5.5%において、目標指標に向けて最低27%の品質改善を実現el

ゴールデンバッチは、製品の品質と安定性の大幅な向上を実現するだけでなく、スクラップやその他の廃棄物によって失われる収益の削減、設備全体の効率性(OEE)の向上、規制遵守の確保、顧客満足度の向上も可能にします。

継続的改善

導入段階とは異なり、ゴールデン･バッチ･プロファイルの継続的な改善は連続的である必要はありません。継続的な改善活動によってゴールデン･バッチ･プロファイルは時間とともに最適化され、メーカにとってより多くの価値がもたらされます。継続的改善は目標に基づき、各バッチの反復が理想的な出力に必要な条件を再現することを保証します。時間をかけて収集した情報と洞察は、製造プロセスの他の部分を理解するために使用したり、機械学習とモデル予測制御を利用した複雑な自律型バッチ･モデリング･ソリューションの入力として使用することができます。

トルティーヤメーカの生産施設では、ゴールデンバッチの実施結果が、将来にわたる継続的な改善への道筋となりました。この結果、予測分析、予測保全へとつながり、最終的にはモデル予測制御の使用への道を開くことになります。これは、自律的に更新されるバッチモデルの次の自然なステップです。
 

ゴールデンバッチは貴社に適していますか?

製造工程にゴールデンバッチを検討する場合、その工程を成功させる可能性を高める3つの重要な基準があります。

1. 一貫性: ゴールデンバッチは、一貫した入力がある静的な製造環境で最も効果的に機能します。入出力条件が常に変化し、頻繁な変更が必要な製造工程に適用するのは非現実的なソリューションです。ゴールデンバッチの理想的な条件から外れるプロセスには、モデル予測制御をお奨めします。モデル予測制御は、複雑で変化する入力変数を通して一貫した品質の製品を駆動する自律的なモデリングソリューションです。

2. 専門家の知見: ゴールデンバッチは、重要なプロセスパラメータや変数に関する洞察を提供することができますが、作動や入力パラメータの調整のためにオートメーションシステムに接続することはできません。影響力のある変数が特定された後、企業のプロセス専門家による検証によって、その関係が実際に因果関係であることが確認されます。ゴールデンバッチの洞察の結果、プロセスを変更することは、製造の専門家が責任を負うことになります。重要な関係が特定され、時間をかけて検証された後、このソリューションはいくつかのクローズドループ制御システムと統合するように発展することができます。

3. アーキテクチャ: 必要な検知、制御、およびデータ保存のインフラが整っていない場合、ゴールデン･バッチ･ソリューションの実装と結果の達成は、ますます時間とリソースがかかるようになる可能性があります。ゴールデンバッチに投資する前に、製造プロセスデータにアクセスし、ゴールデン･バッチ･プロファイルに使用可能な形式で整理できることを確認してください。
 

ゴールデンバッチ製造のための基礎固め

製造プロセスや関連インフラが上記の基準を満たている場合、ゴールデンバッチは製造プロセスに適用するのに適したソリューションであると判断できるかもしれません。既存のデータを活用して新たな知見を提供する強力なツールであり、最適な製品品質の達成と維持、ひいてはコスト削減、収益の増加、顧客満足度の向上を実現します。

詳細は、カリプソチームにご確認ください。