お客様へのご提案
この不確実な時代で、大規模なプロジェクトや投資が優先されることはまずないでしょう。そして、COVID-19によって引き起こされたこの不確実な状況がどれくらい続くかは誰にもわかりません。その結果、COVID-19危機の影響が、製造業におけるより広範なデジタルトランスフォーメーション導入の障害とみなされるかも知れません。
しかし本当にそうなのでしょうか? COVID-19によって多くのメーカでデジタルトランスフォーメーションの展開が滞っている一方で、このイニシアチブを加速させているメーカも多く存在しているのも事実です。
ここでは、この不確実な時代の3つの傾向に焦点を当てたいと思います。
- フレキシブルなモノづくり
- 柔軟な労働力
- モノづくりのオンショア化
デジタルトランスフォーメーションを導入したビジネスが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対処するのに最適な位置にある理由 – ブログをお読みください
長い目で見れば、危機の影響がデジタルトランスフォーメーションに対する見方を完全に変えてしまったと言えますが、見方が変わったからと言ってブレーキがかかると言うよりは、パンデミックの前から進められていたデジタルトランスフォーメーションのトレンドを結果的に加速させる格好になると思います。
トレンド1:需要を満たすためのフレキシブル生産
パンデミックにより、一部の製品(PPEなどの確立された機器とテストキットなどの新しいデバイスの両方)の需要が極端に急増したことはよく知られています。製造業者は、生産を迅速にスケールアップする必要があるかも知れませんし、場合によっては、これまで取り組んだことのない製品を製造するべく軸足を変える必要があるかも知れません。
しかし、この傾向は決して新しいものではありません。ここ数年、メーカは急速に変化する顧客の要求に適応しようと段階的に準備してきました。危機は単にこれをより重要にしただけです。
例えば、ある消費財メーカは最近、製品ラインの設計と製造の方法を変更したため、顧客からの注文内容を3〜6か月ごとに更新できるようになりましたが、これは特殊なケースではありません。各メーカが顧客のニーズにより真剣に寄り添う努力をしています。そして、より短納期かつ小ロットで、よりカスタマイズされた製品を生産しようとしています。
ここでは、自動化やIoTなどのキーとなるテクノロジが必要不可欠です。これらのテクノロジの進歩により、製造業者が組立ラインとサプライチェーンについてより深く検証できるようになり、需要の変化に応じて柔軟に軌道修正を掛けることができるようになります。
トレンド2:柔軟な労働力
COVID-19によるインパクトの一つとして、より柔軟な労働力の必要性が挙げられます。これは、製造業者が以下の様な困難に直面していることが理由です。
- 現場でのソーシャルディスタンスの確保
- シフト全体が隔離を余儀なくされた場合を想定した、交代要員への迅速なトレーニングスキーム
- トレーニングや修理の専門知識のリモート伝達(海外からの出張サポート)が難しい)
繰り返しになりますが、これらの課題は今では差し迫ったものになりましたが、製造業者はこれまでも、労働力をより柔軟に活用することに努めてきました。熟練技術者の退職に伴う効率のよい技術継承の必要性は常に課題でありましたし、特に経験豊富な世代の退職による経験の空白が懸念されるような業界では尚のことです。
製造業者は、これらの課題により迅速に対処する必要があります。つまり、人材をスキルアップさせつつマルチスキルを習得させ、リモートワークを容易にし、既存の専門知識をきちんと継承させるのです。ここでも、デジタルトランスフォーメーションは重要な役割を果たします。自動化により、以前は深い専門知識を必要としていた困難なタスクが簡単にできるようになり、ARにより人々をリモートでトレーニングすることが容易になります。実際、我々ロックウェル・オートメーションもクライアントと協力し、ARを使ったリモート・トレーニング・ソリューションによって交代/補充要員が速やかに現場に入れるような取り組みも進めています。
デジタルトランスフォーメーションのスキルを学ぶことで問題が浮き彫りとなり、結果として習得するのに時間の掛かるまた別のシステムを買わされるだけだ、と言う人もいるかも知れません。しかし、テクノロジの進歩を過小評価しないことです。20年前と比較してみてください。今では誰もが当たり前のようにコンピュータで作業し、スマートフォンを持ち歩いていますが、20年前はだれがその様な世界を想像できたでしょうか?
計画とスケジューリングからQAとバッチミキシングまでの重要なプロセスには、通常、長年のトレーニングを受けた高度なスキルを持つ人々が必要になります。それに比べれば、そういった重要プロセスの自動化をもたらすMES、PLM、またはIoTシステムを習得するのに掛かる時間はずっと短期間であり、結果として日常業務の時間をさらに節約できます。このような課題はもはや克服できないものではないのです。
トレンド3:モノづくりのオンショア化
COVID-19によって見直しを迫られたものの一つがサプライチェーンです。製造業者は、特に医薬品などの分野で、危機に際し国境が閉鎖されたために著しい混乱に直面しました。
東アジアの大規模なオフショア施設に直接アクセスできなくなったときに、突然大きな不安に駆られた会社も多かったでしょう。サプライチェーンの混乱と並んで、オフショア施設のIPとセキュリティに関する懸念が浮き彫りになりました。また、大手製薬メーカであるロシュがヨーロッパ最大級の医薬品製造施設を3つ所有しており、それらがすべてドイツにあり、そしてドイツがCOVID-19検査の世界的リーダとして台頭したことは偶然ではないのです。
現在、より多くの製造業者が、製造工場をオンショアに引き戻し、サプライチェーンをもっと自分に近いところに確保しようと考えていると言っています。そして、オンショアでの生産力向上のために、どうやったらスタッフを迅速にスキルアップおよびマルチスキル化できるかを検討しています。分析および自動化ツールが生産の拡大に寄与することは勿論、デジタルテクノロジとIoTを通じたサプライチェーンマネジメントの強化は製造業者に更に効率的なモノづくり環境を提供します。これは、サイトがオンショアであるか、世界中に分散しているかに関係なく当てはまります。
未来の形
COVID-19のパンデミックは製造業を永遠に変え、デジタルトランスフォーメーションに大きな影響を与えました。しかし、デジタルの進歩を保留にしたり、デジタル・トランスフォーメーション・プロジェクトの方向性を変えたりした訳ではなく、むしろ今のデジタル化のトレンドを結果的に加速させることになるでしょう。それが、長い目で見たときのパンデミックの一番のインパクトだと思います。それに、興味深いことに、それはまた組織の観点からデジタルトランスフォーメーションへの道をはるかに容易にするかもしれません。
大規模なデジタル・トランスフォーメーション・プロセスを経験した人を見てください。関連する技術的変化について語る傍ら、彼らの最大の関心事は文化の変化です。新しいテクノロジの導入は確かに一大イベントですが、それは実際には単なる実現ツールの導入に過ぎません。はるかに大きな課題は、組織の働き方を転換させることです。これができて初めて組織は新しい環境に適応し、誰もがデジタルトランスフォーメーションの成果を享受することができます。パンデミックの拡散によって突然リモートワークへ切り換わったことを思い出してみてください。皆がコミットすれば、この文化の変化は起こるのです。
製造業の未来が現在の出来事によってどのように形作られているかについてもっと知りたい場合は、こちらにアクセスしてデジタルトランスフォーメーションの導入事例をご覧ください。
公開 2020/07/13