ミレンカンプ夫妻にアグリビジネスでの成功をもたらしている原動力は、乳牛の最適なケア、衛生管理、確実なプロトコル、スタッフのトレーニング、そしてテクノロジに注がれる情熱です。1990年代半ばに子牛の生産者として始まったビジネスは、子牛の生産、農場、肥育場、カウ・カーフ牧場経営を含んだ垂直統合事業のアイダホ・ジャージー・ガールズ・デイリーへと成長しました。
ミレンカンプキャトル社のオペレーションマネージャであるマーク・ハリソン氏は次のように述べています。「アイダホ州のジェロームの農場には常時、約3万6千頭の子牛がいて、アイダホ・ジャージー・ガールズ・デイリーでは、約3万頭の乳牛を搾乳しています。」
祖父の時代の搾乳場ではない
2015年の第1搾乳場の完成に伴い搾乳作業が増加したため、ミレンカンプ社は地元のシステムインテグレータであるAutomation Werx社にネットワーク、通信およびテクノロジのサポートを依頼しました。Automation Werx社は、ロックウェル・オートメーションのシステムインテグレータPartnerNetwork™の一員です。
第1搾乳場には、約1万5千頭の乳牛の搾乳を行なうことができる、106ストールのロータリパーラーが2基設置されています。各パーラーは、搾乳前の洗浄消毒、乳房刺激、および搾乳後の乳首の消毒を行なう3台のロボットを備えています。また、搾乳作業には、換気、ポンプによる排水、冷却、定置洗浄(CIP)システムのほか、タンクローリーへ牛乳を積み込むソリューションも含まれます。
Automation Werx社の共同経営者であるトレバー・ステフラー氏は次のように述べています。「第1搾乳場には多数のスタンドアロンのサードパーティ製機器があります。当社の目標は、酪農家チームが一元的に機器を監視できる統合システムを提供することでした。」
この目標の達成のために、Automation Werx社はロックウェル・オートメーションのFactoryTalk® View Supervisory Edition (SE) HMIソフトウェアを採用したネットワーク監視制御およびデータ収集(SCADA)ソリューションを提供しました。
5年後にこの酪農家が搾乳作業を2倍以上に増やすことを計画した際、再びAutomation Werx社にソリューションを求めました。
さまざまな異種機器に対する統合ソリューション
アイダホ・ジャージー・ガールズ・デイリーは、第2搾乳場に106ストールのロータリパーラー4基と、関連するロボットと補助システムを設置しました。Automation Werx社は複数のベンダーとの協力のもと、最新のシステムの提供に取り組みました。これはサードパーティの制御機器からロックウェル・オートメーションの統一プラットフォームへの大規模な入れ換えを伴うものでした。
ハリソン氏は次のように述べています。「私たちは1日22時間搾乳して、機器の消毒のために稼働を1時間止めています。また、乳牛は毎日同じ時間に搾乳しなければならないので、一貫した搾乳スケジュールが必要です。ダウンタイムは許されないのです。」
Automation Werx社は、PlantPAx®分散制御システム(DCS)に基づいた統合ソリューションを開発しました。このソリューションは、Allen-Bradley®のプログラマブルコントローラ、PowerFlex® ACドライブ、Stratix®イーサネット管理型スイッチ、およびFactoryTalk View SEを備えています。
Automation Werx社の共同経営者であるノック・ライシェルト氏は次のように述べています。「当社は、システムのさまざまなポイントで複数レベルの冗長機能を追加しました。例えば、各カルーセルには5台のドライブが必要ですが、7台のドライブを設置しました。そのためドライブのメンテナンスのために稼働が中断することはありません。」
最も重要なことは、PlantPAx DCSは、分かりやすいダッシュボードによりデータ、分析ツール、洞察を提供できるということです。このダッシュボードにより、作業員はアラームログや予期しないダウンタイムイベントのような異常な状況に速やかに対応できます。
持続可能性の維持
Automation Werx社はまた、制御システムの機能を酪農場のサステナビリティ(持続可能性)の目標に合わせて設定しました。
ハリソン氏は次のように述べています。「私たちは14,000エーカー以上の土地を飼料用に耕作し、すべての糞尿を肥料にするために堆肥にしています。この酪農場は、恐らく今までに見たことがないほど清潔な場所です。私たちはそのことに大きな誇りを持っています。」
アイダホ・ジャージー・ガールズ・デイリーは、機器の洗浄と消毒のための化学薬品の使用を削減することも重視しています。化学薬品は環境への影響があり、酪農家にとって単独で最大のコストとなっています。Automation Werx社のソリューションは、乳房の衛生や牛の足浴からCIP (定置洗浄)システムにいたるまで、すべての化学薬品のバッチを管理します。
ライシェルト氏は次のように説明しています。「CIPシステムには洗浄液中の化学物質のレベルを測定するための導電率センサが備えられています。化学薬品を節約するため、システムは最初のバッチの最終リンスを回収し、次のバッチの最初の洗浄にそれを再使用しています。」
冷却装置で使用された水も再度回収され、床洗浄やその他の洗浄作業に再利用されます。
成功の積み重ね
この酪農場では、CIPの洗浄液の回収により、従来の搾乳場と比べると50%以上も化学薬品の使用量を削減できたと試算しています。しかも、バッチ洗浄液が水温と化学薬品の温度を一定に保つため、CIPのサイクル時間が約30分も短縮されました。
ハリソン氏は次のように述べています。「自動化に向けて動き出したときは、すべての機器を管理するために10種類の異なる制御システムについて学ばなければならないだろうと考えていました。しかし、新しいシステムでは中央からすべて監視して、どこでダウンタイムイベントが発生したかを正確に把握できます。」