空港では、お客さまと預けた手荷物との再会が日常的に行なわれています。しかし、バゲージクレームの回転式コンベアの背後には、フライトスケジュール、予約システム、搬送機器などの複雑なネットワークがあります。そして、手荷物処理システム(BHS)では、すべての荷物を追跡し、分類し、正確に配分しなければならなりません。
Kasa Controls & Automation社は、この課題に取り組んでいます。1974年にカンザス州に設立されたKasa Controls & Automation社は、自動車、塗装、穀物などさまざまな業界のお客様に制御システムやオートメーションシステムを提供しています。また、Kasa社はマテリアルハンドリングに関する幅広い専門知識をいかして、手荷物処理ソリューションを提供し、この市場でのリーダ的地位を築いています。
Kasa Controls & Automation社のプログラミング・エンジニアリング・マネージャであるシド・パンザー氏は、「すべてのプロジェクトは新しいパズルです。私たちは、お客様と密接に協力してスコープを定義し、ビジネス上の課題を解決するために必要なデータを提供するシステムを設計することに誇りを持っています。」
ユニークな課題と要件
業界を問わず、また、グリーンフィールドやブラウンフィールドのプロジェクトであっても、システムインテグレータにとっては、積極的な導入スケジュールが方程式の一部となっています。
Kasa Controls & Automation社のエミュレーションマネージャであるアダム・カサダ氏は次のように述べています。「コントロールインテグレータである私たちは、通常、生産や操業が始まる前に現場に到着する最後のチームです。つまり、私たちのスケジュールは、先行する複数のコントラクタの言いなりになることが多く、コントラクタのスケジュールが遅れると、私たちのスケジュールも圧縮されてしまうのです。」
しかし、新しい空港ターミナルのためにBHSを構築したり、既存のシステムを最適化するには、さらなる課題があります。
BHSソリューションは、何マイルものコンベアベルトと光電センサを制御することが多く、フライトスケジュール、乗客情報、TSA手荷物検査システムと統合する必要があります。サービスの中断を最小限に抑えるためには、ロックウェル・オートメーションの制御システム全体に冗長性を持たせることが不可欠です。
「一般的には、Allen‑Bradley®のControlLogix®コントローラを使用して、冗長化された制御システムを構築します。もちろん、制御テストも重要です」と、パンザー氏は述べています。
BHSプロジェクトでは、システムを納期通りに納品し、仕様通りに動作することを保証するために、エミュレーションソフトウェアを使った制御テストが必要になっています。
Emulate3Dソフトウェアでより良いFATを
カサダ氏は次のように述べています。「当社が手荷物処理市場に参入したことで、Emulate3D™ソフトウェアにたどり着きました。当社の顧客は、現場に入る前にPLCコードを検証するためにデジタルツインを必要としていました。」
Kasa社はEmulate3Dソフトウェアを使用して、設計段階でBHSの正確な仮想モデル(デジタルツイン)を構築することができます。モデル化された機器は、速度や加速度、重力や摩擦、配線やIOなどの物理的・デジタル的なパラメータを備えた、実際の機器の複製です。
PLCやSCADAの制御システムをモデルに接続し、モデル化された荷物を走らせることで、Kasa社は実際のシステムが利用可能になるよりもずっと前に、制御を正確にテストすることができる。また、エミュレーションを行なうことで、Kasa社は工場出荷時の受入テスト(FAT)において、複数のシナリオに素早く対応することができます。
パンザー氏は次のように述べています。「エミュレーションがFATの原動力です。このソフトウェアにより、実際のシステムが行なうことを正確に模倣し、それぞれのタスクに応じてモデル内のバッグを操作することができます。」
Kasa社はこのソフトウェアを使って、いくつかのテストプロセスを効率化するツールも作成しました。例えば、あるテストでは、コンベアの速度に応じて予想以上の速さでバッグを光電センサに進ませる必要があります。マウスを使って仮想のバッグを操作することで、そのテストを実行することができます。
Kasa Controls & Automation社のシニア・コントロール・プログラマであるアラン・ペレイラ氏は次のように説明しています。「Emulate3Dを使って、システムを流れるバッグに起こりうる一般的な問題をより簡単に表示する方法を作りました。通常、シミュレーションソフトウェアでは、マウスを使ってバッグを操作してこの問題を再現しようとしますが、これは実際には時間がかかり、あまり正確ではありません。」
「Emulate3Dで作成した私のハンドリングテストは、この問題が発生した場合に何が起こるかを正確に示し、毎回正しく表示しました。これにより、手直しを最小限に抑え、承認プロセスを迅速化することができました」と、ペレイラ氏は続けます。
現場での時間短縮
最終的には、制御装置を仮想的にテストできることで、現場での作業時間を短縮し、システム全体の立上げを迅速に行なうことができます。
ペレイラ氏は次のように述べています。「COVID-19のパンデミックの影響で、ある顧客のためにZoom上でのFATを成功させました。エミュレーションによってお客様に大きな自信を持っていただき、スタートアップの期間を大幅に短縮することができました。」