機械の健全性をモニタし、潜在的なあらゆるエラーに対応するインターネット接続されたデバイスやコンポーネントにより、ロボットアームやコンベアが絶対に故障しないスマートファクトリが、今や現実のものとなっています。
しかし、製造プラントの大多数において、現状は少し異なります。スマートデバイスに対応できない何十年も昔の機械で稼動している工場がいまだに存在します。
大多数の製造メーカの現状からスマートファクトリに移行するための、既製のソリューションは存在しません。この変革には、追跡のための各機械の機能や評価基準の理解、使用に適した機器や最適な設置場所を判別するための試行錯誤、そしてデータ収集と活用のための包括的な計画が必要です。
産業技術の進歩とともに、ロックウェル・オートメーションは機械装置メーカ(OEM)がスマートマニュファクチャリングへの移行を開始し、前進するための拡張性に富んだスマートなソリューションを開発しています。
ついにその時がやって来ました
アサレアケア社はオーストラリア、ニュージーランド、およびその他の太平洋諸国にビジネスを展開するパーソナルケアや衛生用品の大手企業であり、家庭で日常的に使われるコンシューマ製品を製造しています。アサレアケア社のカウェラウ工場は、1955年からニュージーランドで唯一のティッシュペーパー工場として操業しています。
アサレアケア社は高品質な製品の生産を継続し、変化する安全規格に対応するために、所有する11の工場や施設に最新技術を導入することを決めました。
今こそ陳腐化の問題を解決し、スマートマニュファクチャリングに移行する時だと決めたアサレアケア社は、ロックウェル・オートメーションに制御の設計、製造、および立上げと、既存のティッシュ製造機のアップグレードを依頼しました。
「当社は長期に渡って事業を続けるために競合力を高める必要があり、それがアップグレードの主な理由でした」と、アサレアケア社の電気技師であるポール・スティーブンソン氏は語ります。
安全な生産を推進
カウェラウ工場の既存のドライブシステムは、アナログの直流システムであり、定期的なメンテナンスを必要としていました。また、導入から30年が経過し、陳腐化にも直面していました。アサレアケア社はメンテナンスが必要なシステムでのプロセスに慣れてはいたものの、ブラシを頻繁に交換する必要がありました。
ロックウェル・オートメーションはアサレアケア社が抱える問題と潜在的なリスクの評価を支援し、アプリケーションに関する知識をいかして最新技術を使用したソリューションのエンジニアリングを行ないました。
新しいシステムは、過剰な電気ノイズやモータ循環電流といった旧式のACドライブシステムに関連したさまざまな要因を考慮して設計されました。また、Allen-Bradley®のGuardLogix®コントローラと安全速度モニタおよび安全ゲートを使用し、安全制御を統合するような設計もなされました。
このアップグレードでは、ティッシュ製造機のラインに対して新しいモータと8台の新しいAllen-BradleyのPowerFlex®ドライブが導入されました。また、AFE (アクティブ・フロント・エンド)によって、省エネルギーのための回生ブレーキ機能と、すべてのコモン・バス・ライン・ドライブに対する高調波軽減機能を提供しました。
2つのAFEを並列することで2,470AのDCバス容量を確保し、すべてのティッシュ製造機のコモン・バス・ドライブ・システムへの給電を実現しました。
簡単な立上げ
ロックウェル・オートメーションのグローバル・ソリューション・チームは、最初に機械を正しく構成することでリスクを軽減するためのさまざまなソフトウェア標準を長年にわたって開発してきました。
カウェラウ工場の場合、オーストラリアのシドニーにあるレーンコウヴ組立てセンターでソリューション全体のエンジニアリングおよび製造が行なわれ、納品されました。立上げ作業中のダウンタイムを最小限に留めるため、設置前に完全な工場受入テスト(FAT)を行なって機器をテストしました。
アサレアケア社のプロジェクトマネージャであるポール・カーソップ氏は次のように述べています。「これらの機械は停止するように設計されている訳ではなく、当社の給水設備も機械の停止に対応していません。ですから時間が常に制約されます。私たちはダウンタイムを最小限に留め、2週間の停止期間を活用して施設での追加作業を完了する必要がありました。プロジェクトに携わる人物全員が協力することで、これ以外にも工場で2つの大きなアップグレードがあったにも関わらず、スケジュールよりも早く導入が完了しました。」
将来を見据えた工場フロア
アップグレードの結果、診断情報がより早く入手できるようになり、システムのアクセス、修理、および維持に関するサポートレベルが向上しました。長年使用されてきた機会も信頼性が高まり、保護能力や生産性も向上しました。
このプロジェクトの意味は、工場へのシステムや技術の導入だけではありません。ティッシュ製造機や抄紙機についての専門的な経験により、グローバル・ソリューション・チームはカウェラウ工場に機械および機器に関する洞察と詳細な知識をもたらしました。
この工場のシステムは大量の技術的な入力を必要としなくなり、最大の成果である信頼性の向上により、生産速度を上げれば生産性も向上するようになりました。「さらに、本当に運転しているか時々チェックしなければならないほど、機械が静かになりました」と、カーソップ氏は語ります。
安全に関するもう1つの事例
人、機械、およびプロセスの生産性だけが、サステナブルな事業の重要な要素ではありません。研究によると、業界トップクラスの機械装置メーカは、安全を生産性と同様に重視することで、高い総合設備効率(OEE)を達成しています。
工場とシステムをアップグレードしたことで、大きな成果を得た大手企業がオーストラリアにも存在します。
オーストラリアとニュージーランドで最大の出版社であるフェアファックス社は、1997年に独自の印刷所をニューサウスウェールズ州のタムワースに設立しました。この印刷所の印刷機は中古の機器から組立てられ、25~30年が経過していました。
メディア産業に関わる企業は、より広範な地域にサービスを提供するため、新技術や統合された印刷センターに投資する必要があります。フェアファックス社はタムワースの印刷所を再構築し、新しいグリーンフィールド施設に変えることを決定しました。
タムワースの印刷センターは、毎週15~20トンの新聞を発行しています。その上、それ以外の印刷業務も行なっています。安全を第一に考慮しつつ、これらの生産要件を満たすために、フェアファックス社はゴス・インターナショナル社とロックウェル・オートメーションと共にリスクアセスメントを行ないました。
制御と安全の統合
リスクアセスメントで明らかになった情報に基づき、施設に革新的な安全ソリューションが導入されました。これにより、制御と安全の統合における最新技術に基づいた、印刷所の優れた安全記録が樹立されました。
プロジェクトの成功のカギは、タムワース印刷所に効果的な安全とドライブおよびプロセス制御を提供する、完全に統合されたソリューションに対する要件でした。
GuardLogixセーフティコントローラが最適な選択であり、ソリューションにおける主要なコンポーネントの1つでした。この制御およびドライブシステムは、印刷機が低速になるまで特定の安全ガードを解除できず、誤ったタイミングでユニットガードを解除すると印刷機が停止してケガを防ぐよう設定されました。
このソリューションには、安全I/OとGuardLogix間の通信を提供して、安全、ドライブおよびプロセス制御の統合を実現するDeviceNet™も使用されました。印刷機への給電には4台のPowerFlex DCドライブが使用され、ControlNet™通信を使用して制御システムにリンクバックされました。
また、110台以上のSipha™センサを印刷所内のガード上に設置しました。さらに、PanelView™グラフィックターミナルを使用してガードのリアルタイムステータスを表示することで、迅速なトラブルシューティングを可能にしました。
ガードによって達成された安全の記録
この印刷所では6台の印刷タワーと、2つのフォルダが付いた6つのリールスタンドで新聞を完成させます。この印刷ラインは1回の印刷としても、2回の独立した印刷(それぞれ3台の印刷タワーと1つのフォルダを使用)としても動作させることができます。
これを可能にするために、フェアファックス社は安全システムにゾーン管理を採用しました。このゾーン管理では、1回の印刷として使用する際には印刷機のすべての安全停止がアクティブになり、2回の独立した印刷として動作する場合には1回の印刷の場合に使用する安全停止が他の安全停止を制御しません。
指を挟まないようにし、重傷事故を防ぐために、全体を停止できる非常停止機能が用意され、印刷機だけでも150以上のガードが搭載されてはいるものの、保護機能はメンテナンスや生産の面では不便で、障害の原因ともなります。
「新しいソリューションを採用したことで、生産やメンテナンススケジュールに遅れが出なくなり、私たちが必要としていた作業員のための安全と作業環境が提供されました」と、タムワース印刷所のプラントマネージャであるデビッド・ヘッジズ氏は語ります。
さらに、フェアファックス社では稼動部品の信頼性が飛躍的に向上しました。印刷機オペレータは、すべてのガードが正常に動作しているか確認するチェックを毎月行なうようになりました。
印刷機の設置後、ガードスイッチの故障がなくなり、印刷機の高度なガード機能によりケガやニアミスも発生しなくなりました。これは、印刷所の2,369日間無事故という、グループ内で最良の安全記録で裏付けられています。