バイオテクノロジ企業および製薬会社は、自社の競争力を維持し、製品の利用者の満足度を向上させる方法としてインテリジェントな接続された運用を目指しています。
グローバルな医薬品業界は、コンプライアンスを遵守し、データの整合性を維持しなければならない一方で、医薬品の市場展開までの時間の短縮というさらに増大する圧力に直面しています。対象を絞った少量の医薬品と個別化医療の需要はますます拡大し、そのため大規模なバルク生産から、複雑なバッチ処理、頻繁な製品の切換え、および細部にいたる追跡を必要とするマルチプロダクト施設へとオペレーションは変化しています。
製薬や食品生産の産業用プロセス制御で進行中のデジタルトランスフォーメーションを支えるイネーブリングテクノロジの中で、MESソフトウェアは基本的な構成要素の1つです。MESは生産工程を標準化できる一方、生産工程を統合してより均質にし、生産工程にマイナスの影響をまったく与えずに企業と従業員の生産性に有益な影響を与えます。
MESは医薬品製造のコンプライアンスを改善
浙江メディカル(Zhejiang Medicine Company (ZMC))社はグローバルなバイオ医薬品製造と無菌包装の専門企業で、中国の輸出業の革新的な医薬品企業モデルとなっています。同社は最近、FDAの不足医薬品リストの抗生剤をより効率的にかつ経済的に生産するために新しいMESシステムに投資しました。
注射用の減菌粉末製造プロジェクトは、浙江メディカル社にとって最初のMESアプリケーションのパイロットプロジェクトでした。ヨーロッパや米国の厳格な規制要件に適合するために、浙江メディカル社はロックウェル・オートメーションを戦略パートナとして選びました。同社は、PharmaSuiteを使用してコンプライアンスと効率的な生産を保証するMESシステムの中核としてバッチ管理を構築しました。
従来の紙の記録と文書管理を置き換えるPharmaSuiteは、100%ペーパレスの生産という目標の達成を支援しました。PharmaSuiteから生産オーダが発行されると、オペレータはステージングルームから材料を取り出します。デジタルラベルを使用して、PharmaSuiteはトレーサビリティを実現し、間違いや二次汚染を防ぎます。倉庫管理システムおよびラボラトリー情報管理システムの統合と合わせて製造工程をデジタル化することにより、ZMC社における電子バッチレコードの生成が可能になります。
プロセス・オートメーション・システムとの統合を通じて、PharmaSuiteは実際のパラメータをキャプチャし、リアルタイムのレポートを生成します。ロックウェル・オートメーションのモバイルソリューションのアプリケーションでは、グローバルなタブレットを使用して、機器や材料のデジタルラベルのスキャニングと、関連したレポートのMESへのアップロードを簡単に行なうことができます。
PharmaSuiteは機器や材料のデジタルラベルをスキャンすることにより、生産機器やその中にある障害機器のステータスを管理します。また、PharmaSuiteは使用すべき正しい機器を確認し、生産工程が制御されていることを保証します。生産工程のリアルタイムのアラームモニタは、異常な状況にタイムリーに対応できるようにします。
PharmaSuiteレシピ設計機能はISA S88規格に準拠し、モジュール式でグラフィカルな構成可能ソリューションを提供します。最新の仮想化テクノロジを使用するMESとSCADAシステムは3台の物理的なサーバで構成され、ハードウェア費用とメンテナンス費用を大幅に削減する一方、IT管理の効率を改善します。
PharmaSuiteは、正確かつ完全にリアルタイムのデータと生産工程の情報をデータベースに保管し、バックアップを作成します。アクセス管理と監査証跡機能は、すべてのデータの作成、エントリ、変更が管理され、トレース可能であることを保証します。
従来の紙の記録と文書管理を置き換えるPharmaSuiteは、生産工程で100%ペーパレスの生産という目標の達成を実現しました。新しいソリューションは、また、データ処理の自動化によりデータの誤解釈や誤入力のようなエラーのリスクを軽減し、品質を改善しました。その上、PharmaSuite MESはコストを削減します。こうしたコストの節約は、5~10%の労働力の削減、バッチ生産レビューのサイクルタイムの46~75%の削減、およびマネジメントレビューのサイクルタイムの50%の削減を含みます。
新しいMESにより、ZMC社はかつてないほど厳しい規制環境で法令に準拠する一方で、競争が激しいグローバルな医薬品業界において業績を拡大することができました。
デジタルトランスフォーメーション: エンドユーザからの視点
最近、イタリアで開かれた「デジタルトランスフォーメーション: 製造業の課題とチャンス」というタイトルの円卓会議で、ロックウェル・オートメーションは生産工程のデジタル化の課題について討議することができました。そして、どのように新しいテクノロジと事業価値をこれらの課題に割当てるのかということについて討議しました。
IBI Lorenzini社からルカ・ピザーノ氏、グリューネンタールグループのFarmaceutici Formenti社からアレッシア・クリベリ氏、Idea 75社からダビデ・カセア氏、Molteni Farmaceutici社からティツィアーノ・ペトルチアーニ氏、IBSA Farmaceuticiイタリア社からジークフリート・ヴェリコーニャ氏が、ロックウェル・オートメーションのイタリアチームと協力して、イタリア全国のさまざまな施設でMES、シリアライゼーションソリューション(標準PharmaSuiteソフトウェアに基づく)およびプロセステクノロジの実装による4.0生産システムの実現に向けて作業しています。
Idea75社およびFarmaceutici Formenti社は、MESソフトウェアを基本的な構成要素の1つとして定めています。Molteni Farmaceutici社およびIBI Lorenzini社では、当初規制要件に対処するためにシリアライゼーションを導入しましたが、その後、ロックウェル・オートメーションからPharmaSuiteソフトウェアを採用してオペレーションを次第に変革しました。両社は自社の施設に新しいプロセス管理方法を実装する、すなわち、サプライチェーン全体にわたってデータの収集および分析を最大化し、最適化することを目的としていました。
サプライチェーン全体にわたるデータの統合、管理、および整合性の重要性は、IBSA Farmaceuticiイタリア社にとってもまた根本的な側面です。
この例や他の例でも、プロセステクノロジ、生産ラインの論理的制御、および環境条件のモニタは、拡張性およびラインオペレータとのやり取りの向上とともに最大の安定性および安全を保証しなければなりません。
医薬品会社の場合、データの損失を防ぐために一丸となって取り組むだけでなく、データ分析と比較を可能な限り短時間に容易にできる安定した拡張性のあるプラットフォームを持つことが欠かせません。
こうしたエンドユーザからのフィードバックに基づいてスマートインダストリ4.0生産工程の構築を追及している企業は、明らかに「自律的な」オートメーションプロセスを使用したかつてないほどに統合された、迅速かつスリムなデータ管理を展開する必要があります。
これらのイタリアのエンドユーザが私たちに述べたことは、インダストリ4.0の世界では常に、改良された標準化形式とオープンな統合プラットフォームが存在するということです。
そのため、このデジタルトランスフォーメーションを絶えず推進するためには、先例のない決断を支援するために、ITとOTをより密接に接続し、必要とする人々に対してデータと情報をより使いやすくかつ移転しやすくするソフトウェアとテクノロジに投資することが必要です。
とりわけ、デジタルトランスフォーメーションが3つの基本要素である人、プロセス、およびテクノロジに関連していることに注意を払うことは重要です。