オーストラリアは世界で最もダイナミックな鉄鋼産業の1つであり、年間約530万トンの鉄鋼を生産し、そのうち約160万トンが構造用鋼です。
構造用鋼は、その強さと持続可能性から、商業・工業用建築に最もよく使われる材料の1つです。
リバティ・プライマリ・スチール社のワイアラ製鉄所は、アデレードの北西約400kmに位置する南オーストラリア州のワイアラにある高炉製鉄法による年間約120万トンの鉄鋼生産能力を持つ総合製鉄所です。
生産された鋼材の約65%はビレットの形で国内外の市場に鉄道で輸送され、残りの鋼材はワイアラ構造ミルで構造用鋼材やレールの形で最終製品に加工されます。
リバティ・プライマリ・スチール社のワイアラ製鉄所は、建設業界への鉄鋼供給を確保するために、ロックウェル・オートメーション社の認定システムインテグレータであるアライアンス・オートメーション社に、工場の主要部分であるE&S矯正機のアップグレードを依頼しました。
ダウンタイムに時間をかけない
建築物によく使われる真っ直ぐな鋼鉄の梁は、商業、工業、住宅の基礎を形成します。そのため、さまざまなサイズのまっすぐな鉄骨を供給することは、リバティ・プライマリ・スチール社のワイアラ製鉄所にとって重要な優先事項です。
鋼材の矯正工程の中心となるのは、1988年に設置されたE&S矯正機で、主に鉄骨を矯正することを目的としています。最近になって、この矯正機に信頼性の問題が発生し、工場のダウンタイムや生産性の低下を招いていました。
アライアンス・オートメーション社は、リバティ・プライマリ・スチール社のワイアラ製鉄所において、旧式の矯正機の自動化システムの問題による長期の生産停止のリスクを軽減するために、制御システムとドライブシステムのアップグレードを設計しました。また、ロックウェル・オートメーション社は、製品の選択とドライブシステムのエンジニアリングに協力しました。
アライアンス・オートメーション社のシニア・エンジニアリング・プロジェクト・マネージャであるバリー・ガードナー氏は次のように説明しています。「ワイアラ製鉄所では、製品の約70%がこの装置を通って矯正されるため、この矯正機は非常に重要な設備です。」
「矯正機に搭載されていた旧式のDCモータは、毎週のように埃やスケールを除去するためのメンテナンスが必要で、生産のダウンタイムにつながっていました。新しいDCモータを購入するには多額の費用がかかるため、信頼性が高く、メンテナンスコストを削減できるACドライブシステムへの移行を決定しました。」と、述べています。
新しい制御システムと駆動システム
モータやドライブの技術は時代とともに大きく進歩し、今ではかつてないほどの柔軟性と高性能を実現しています。ロックウェル・オートメーションとアライアンス・オートメーション社は、リバティ・プライマリ・スチール社と緊密に協力して、矯正機を詳細に理解し、アップグレードに最適なソリューションを特定しました。
この矯正機には、個別に駆動される4つのロールがあり、スチールバーがマシンに入ると、最初のローラを通過した後、残りの3つのローラを順次通過します。この機械の負荷分散と安全の要件を考慮して、このアプリケーションに最も適した選択肢として、Allen‑Bradley®のイーサネットを介した安全トルクオフを搭載したPowerFlex® 755ドライブが選ばれました。
ロックウェル・オートメーションのビジネス・ディベロップメント・マネージャであるピーター・トマジックは次のように述べています。「プロジェクトの成功にはドライブ制御が不可欠であり、最適なモータとドライブのサイズを選択するために、かなりの調査が行なわれました。」
Allen‑BradleyのGuardLogix®プログラマブル・オートメーション・コントローラは、POINT Guard I/O™モジュールとSIL3 (AS 62061)までの安全度水準を達成するのに適した統合安全トルク・オフ・カードを搭載したPowerFlex 755、およびすべての可動装置を迅速かつ安全に停止させるための非常制御停止(AS 60204に準拠)を組み合わせて使用することで、矯正機のハイレベルな制御を行ないました。PanelView™ Plus 7グラフィックターミナルとFactoryTalk® View Machine Editionがオペレータインターフェイスを提供し、統合のしやすさと診断機能の向上を実現しました。
「ロックウェル・オートメーションのグローバル・ソリューション・チームが提供するサービスとサポートに加えて、ドライブシステムのアプリケーションに関する知識は、プロジェクトの成功に大きく貢献しました。これは、アライアンス・オートメーション社とロックウェル・オートメーションの間でスキルセットを共有する、真に協力的な作業関係でした」と、ガードナー氏は語りました。
新しいシステムは、立上げを容易にするために施設外でテストされました。事前テストと綿密な計画により、予定より早くシステムを稼働させることができました。最初の鉄骨は、E&S装置を非常にスムーズに通過しました。これは、負荷分散アプリケーション用のロックウェル・オートメーションのドライブ・システム・コードの堅牢性と十分な実績のおかげです。立上げは非常に迅速に行なわれ、無負荷のモータテストに1日、製品のテストに1日しか費やしませんでした。ロックウェル・オートメーションのエンジニアによる監視のもと、3日目には生産を再開できました。
構造用鋼材の供給を確保
リバティ・プライマリ・スチール社、アライアンス・オートメーション社、およびロックウェル・オートメーションのコラボレーションにより、ワイアラ製鉄所の矯正機の信頼性と生産性が大幅に向上しました。
リバティ・プライマリ・スチール社のプロジェクトマネージャであるアンドリュー・ハーディング氏は次のように述べています。「ロックウェル・オートメーションとのコラボレーションは、リバティにすぐに実行可能なソリューションがあるという大きな自信を与えました。この自信は、プロジェクトが最小限の問題で統合と立上げを完了し、スムーズに運用を開始したことで実現しました。」
「同様に、アライアンス・オートメーション社は、設置と統合の作業をしっかりと監督することで、重要なレベルの専門知識とプラントの知識をもたらしてくれました。この2つの企業がリバティチームと協力することで、終了日を超えることのできないアグレッシブな「シャットダウン」スケジュールの中でプロジェクトを成功させることができました」と、語っています。
この新システムは、信頼性の高い高速化により、生産能力を40%向上させることができます。さらに、矯正機のライフサイクルが最適化されたことで、マシンのパフォーマンスが向上し、運用上のリスクが低減されたほか、故障の発見が改善されたことで、工場のダウンタイムが減少しました。