何年にもわたって、機械メーカは、装置の交換時間と柔軟性を改善することに注力してきました。その結果、生産するSKUの数はかつてないほど増加しましたが、柔軟性とスループットは標準的なプラントフロアで均等に対応できるものではありません。
つまり、ケースパッカーは分当たり300パウチを充填しますが、パウチフィルタはその速度に対応できません。全体の包装ラインは数分で切換えることができますが、送り込みをする高速の加工機器はそこまで機動的ではありません。
通常であれば、製造メーカは一部の機器のスループットを犠牲にし、柔軟な生産と適切な供給を維持することができます。しかし、パンデミックが発生したとき、需要の急増により、工場のスループットを最大化することが優先され、結果として柔軟性が損なわれました。
最近の出来事から、この業界に携わるすべての人にとっての次の大きな課題が浮き彫りになりました。それは、スループットに妥協することなく、よりスマートで柔軟性の高いマシンをいかにして作るか、ということです。
境界を取り払う技術
最優先事項は機械の性能を最適化することですが、多くの機械メーカは、従来の技術に基づく装置の段階的な改良だけでは、お客様が求める柔軟性を達成できないことに気付いています。
静的な機械部品、摩擦を利用したコンベア、そして多くの付属装置で作られた機械は、一定の変数で均一な製品を運転する高いスループットを達成できるかもしれません。しかし、「多品種少量生産」の世界では、設計をいくら調整しても、生産性の目標を達成できないことがよくあります。
メカトロニクスの進歩により、より柔軟な装置への道は、より良いスループットへの道であることが多いのです。特に、組立や包装などのアプリケーションでは、以下の技術が道を切り開いています。
- ロボット工学
本質的に柔軟なロボットは、機械的な経路変更ではなく、視覚誘導ライントラッキングを使用して、非常に多様な製品形状とサイズに対応します。ロボットは臨機応変にレシピを変更し、しかも生産速度の要求に応えます。
従来の搬送システムは、固定速度で事前に設定されたパス上で製品を移動します。ICTは、他のカートがシステムのどこにあるかに基づいて、インテリジェントにカートを移動することで、柔軟性とスループットを増大させます。
- 自動切換え
切換機構にスマート・サーボ・モータとドライブを搭載することで、ボタン1つで新しい製品構成へのセットアップを実現します。
メカトロニクスは複雑な機械設計を置き換えるため、より少ない部品で、より少ないスペースで、より多くの機能を実現することができます。また、エミュレーションとデジタルツイン技術により、機械メーカは仮想世界で設計のテストと確認を行なうことができ、より少ないリスクで技術革新を促進することができます。
より多くの機械装置メーカ(OEM)が、統一された機械制御戦略を用いて、これらの技術を装置やプラントアーキテクチャに統合しています。
データを次のレベルへ
お客様の成功の機会を増やす方法の1つは、情報の可用性を高めるために機械を設計することです。これは、統合を簡素化し、分析プラットフォームやビジネスシステムにシームレスかつ安全に接続する制御プラットフォームとネットワークインフラを標準化することを意味します。
お使いの機械や装置には、メンテナンスと稼働率を向上させるために、説明的なアラームが備わっていることが多いでしょう。モータの過負荷を示すアラームは、トラブルシューティングに役立ちます。しかし、作業者は、その場でどのように対応するか、複数の判断を下す必要があります。
堅牢な過去のマシンデータベースへのネットワーク接続があれば、分析ツールは過去のパフォーマンスを基に将来の動作を予測するモデルを作成し、機械学習を使ってオペレーションを最適化することができます。これは、異常を予測して、オペレータに予防措置を講じる時間を与えるような単純なものです。
また、スレッショルド(閾値)を維持し、機器の稼働を維持するために、モータの回転数を落とすなど、機械が自律的に適切な行動を取るようにすることも可能です。
活動開始
また、機械メーカはeコマース空間で柔軟性が何を意味するかを再考しなければなりません。過去10年にわたって、仮想市場は指数関数的に成長を遂げました。しかも、COVIDによるパンデミックが、オンライン小売の便利さを必要不可欠なものにして需要を増大させました。
さらに、卸売や小売の流通から完全に撤退し、オンラインで消費者に直接販売することで利幅を拡大する製造メーカも増えています。
次に来るのは何でしょうか。サプライチェーン、eコマースポータル、MESシステム間の統合を強化し、需要に合わせたより迅速で柔軟な製造対応を可能にすることです。
また、機械装置メーカにとっては、製造工程の早い段階で、機械のデジタル基盤をお客様と共有することを意味します。また、生産現場に簡単に導入できるだけでなく、企業内外のアプリケーションに直接接続できるような機器を設計することも必要です。
拡張性のある製品で期待に応える
スケーラブルなオートメーションプラットフォームは、提供する製品の柔軟性を向上させ、お客様とお客様の顧客の双方に「勝利」をもたらします。真にスケーラブルな製品では、コントローラやI/Oからヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)、バッチプロセス制御、分析に至るまで、プラットフォームのあらゆる側面でオプションが提供されます。
オープンな通信プロトコルにより、お客様はオートメーションインフラに大きな先行投資をすることなく、よりスマートな機器の価値を獲得し、その成長に合わせて拡張することができます。
機械メーカは、再利用可能なプラグ&プレイ対応ツールを活用することで、製品の拡大に伴う設計プロセスを合理化することができます。さらに、あるシステムで開発されたアプリケーションや分析を別のシステムで簡単に活用することができます。
よりスマートな働き方
どんなに機敏な機械でも、最適なパフォーマンスが発揮されなければ、スループットを最大化することはできません。そしてこの2年間で、私たちは機器の課題を解決するために、より柔軟なアプローチをとることを学びました。
移動の制限に直面している機械装置メーカにとって、設置された資産へのリモート接続は機械を修理する唯一の方法であり、お客様はこの技術にますます好意的になってきています。
また、パンデミックにより、機械の性能を最適化し、より柔軟なワークパラダイムをサポートする他のデジタル技術の採用も加速しています。特に、拡張現実(AR)プラットフォームは大きな影響を与えました。例えば、このコラボレーション遠隔支援ツールは、拡張現実を利用して、現場にいなくても作業員がリアルタイムで指示やガイダンスを共有できるようにしたものです。
成功のための戦略
メカトロニクスとデジタルテクノロジの最近により、機械の柔軟性またはOn-Machineのスループットを50%以上も向上させることができます。そこで、機械メーカとしてどんなステップをとることができますか?
一言アドバイス: これは改造プロジェクトではありません。
新しいテクノロジがもたらす劇的な利益を達成するためには、機械設計を「白紙」に戻すアプローチが必要でしょう。そして、デジタル化の実現が最終的にどこへ向かうのか、お客様のニーズに沿ったビジョンを持ってください。私の経験では、機械装置メーカとお客様の間の自然な「押し合いへし合い」を利用した共同プロジェクトが、最も革新的でコスト効率の高い機械を生み出すことになります。
スループットを損なうことなく柔軟性を向上させる、よりスマートな機械や装置を構築する方法について詳しく説明します。