2020年までに200億個を超える産業用スマートデバイスが工場フロアに設置されると予想されています。ネットワーク接続され多くの情報をやりとりできるオートメーションシステムのこのような成長は、既にワークフローへの企業の積極的な取組みを推進し、データを取り出し、分析し、状況に当てはめ、共有する新たな機会を作り出しています。
コンピューティングテクノロジの進歩により、オペレーショナルインテリジェンスは現実のものとなってきました。急速に変化するすべてのビジネスデータを活用し、リアルタイム情報を表示し、問題を分析し、ソリューションを見付けます。
オペレーショナルインテリジェンスを使用して、工場フロアから管理レベルまで、誰もが迅速な意思決定やビジネスの改善に必要な可視性や洞察、サポートを利用できます。
ただし、最新技術では運用マネージャが一度に対処できる以上の膨大なデータが配信されます。例えば、分散制御システム(DCS)や、製造実行システム(MES)、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)など、支援テクノロジの概要リストだけでも見るのに時間がかかります。
例えば、外部ベンダーを使用して会社が導入できるさまざまなMESソリューションが存在するだけでなく、ソリューションによっては生産工程に合わせてカスタマイズされます。「設定なしですぐに使える」ようなシステムはないため、製造メーカが自社業務に最適なシステムを選択することすら困難が伴います。
新世代MESプラットフォームの開拓
約10年前に、ロックウェル・オートメーションは、世界規模で展開する複数のシステムを標準化するためのエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムの開発に向けて取り組んでいました。
製造業務のさらなる改善を進めるために、施設およびサプライヤネットワーク再構築の5ヵ年年計画が策定されました。
この計画では、技術コンポーネントに対処し改善するため、ロックウェル・オートメーションは、プラントや施設全体のさまざまな製造実行システムの更新に焦点を当てました。
その第一目的は、事業活動の詳細を理解し、プラントマネージャや現場監督、オペレータがすぐに使用できる情報を直ちに読取り、適切に対応できるようにすることでした。
長期にわたる開発の後に、ロックウェル・オートメーションは、工場フロアの実行システムとアプリケーションソフトウェアの豊富な機能の両方を含む新世代のMESプラットフォームを開発しました。
この新しいMESには、自動車、医薬品、食品および飲料を含む主要産業分野の特定のビジネスおよび生産ニーズを満たすように設計された業種固有のコンテンツが含まれます。
また、このMESでは、会社が継続的に追加MESアプリケーションをアップグレードすることもできます。各現場でのばらつきを抑え、情報の可視性を高めることによって、マネージャやオペレータは生産の効率/非効率性を測定することができます。これによって、業務の包括的観点や成功を測る会社全体のベンチマークが得られます。
MESによる改善
MESは、実行からデータ管理までの情報ループを閉じることにより、製造メーカにコネクテッドエンタープライズの体験を提供します。MESでは、多くの業界で共通する機能に対応した標準的なアプリケーション・ライブラリ・スイートを利用できます。
さらに、ロックウェル・オートメーションのMESアプリケーションパッケージは、品質およびパフォーマンス管理などの別個の機能も提供できるように設計されています。具体的に言えば、先進的で拡張性に富んだMESは、以下の点で会社の役に立ちます。
- 運用上の優秀性を達成: 原材料、機械効率、労働力、および消費エネルギーなどの固定および変動製造資産を活用することにより、スループットを最適化し、資産効率を改善します。生産性を高めると同時に、納期を遅らせずに損失を削減し、初回品質合格率を改善します。
- サプライチェーンの効率向上: 生産データを状況に応じて収集することによって、オペレータは業績目標からの逸脱を素早く簡単に認識し、操作上の問題の根本原因を理解できます。これにより、製造メーカは問題の影響を低減し、サプライチェーンの効率を高めることができます。プラント資産のスケジューリングと実行を制御し、材料の生産と消費を追跡することにより、正確な在庫レベルを維持します。
- 法令および取引相手への報告義務の遵守: ロックウェル・オートメーションの定評のある製造業務の管理ソリューションを使用して、ベンダー規格準拠や製品の安全性、および優れたレポートおよび文書化機能をもつ系譜およびトレーサビリティを管理します。
- サステナビリティ目標の達成: 水道、空気、ガス、電気および蒸気の使用が生産に及ぼす影響をより良く理解することによって、製造メーカはリソースやドライブ装置の改善を管理でき、会社のサステナビリティ目標を高いレベルで達成します。
ロックウェル・オートメーションのMESソリューションは設定可能であるため、製造メーカは自社のプロセスに適合する特定の値や特性を取捨選択できます。この機能ではプルダウンメニューを使用したり値を直接入力してシステムを設定できるため、会社はすぐに結果を得ることができます。
MESライフサイクルのベストプラクティス
一流製造メーカでは高品質なリアルタイムデータの価値が認識されていますが、総合的で良好な自動化生産を実現するための業務に適したソリューションの組合せを発見できている会社はまだ多くありません。
MESを選択する際に、会社は長期的なシステムメンテナンスについて考慮し、ソリューションのアップグレードに備える必要があります。カスタマイズされたシステムでは、広範囲のエンジニアリングのアップグレードや、エンジニアリングの一新が必要となる場合があります。
ロックウェル・オートメーションのソフトウェアは、主として基本プラットフォームを通じて機能しますが、それだけではなくアドオンを組み込む機能があります。このため、会社は基本システムを容易にアップグレードする機能を保持しながら、生産目標に合致したシステムによる高品質の製造が可能になります。
MESを効果的に使用するには、明確に定義されたユーザ要件仕様(URS)が極めて重要です。これによって、MESの機能をより良く理解できるためです。その結果、会社は投資を最大限に活用できるようになります。
適切に定義されたURSとともに、生産マネージャがアップグレードやMESの全交換の必要性を判断できるように、未達成の目標や低信頼性、ITまたはデータ構成に伴う複雑化についても理解する必要があります。
多くの旧式システムのアップグレードにはエンジニアリングが必要となりますが、ロックウェル・オートメーションでは、基本ソフトウェアをアップデートすることによってシステムのアップグレードが簡単になります。これによって会社は、ソフトウェアに追加するアプリケーションパッケージをアップグレードまたは交換するだけで済み、コストと時間を節約することができます。
各会社にはそれぞれ独自の導入およびアップグレード基準がありますが、時代遅れのシステムでは生産規格への準拠やデータ品質を満たすことができないことを常に考えておく必要があります。こうした多くの理由により、規格に準拠して生産を迅速に再開するためには、MESのアップグレードや交換の計画を立てておくことが重要です。
オペレーショナルインテリジェンスの獲得
適切なMESは、生産工程を合理化し、会社のコストを削減し、時間を短縮し、最適化を可能にすると同時に、製品の品質を一定にし、データ構成を標準化することができます。
製造工程を管理する以外にも、ますます多くの製造メーカがMESを活用し、ERPのようなビジネスシステムやリアルタイムで稼動するプラント制御システムとの接続に力を入れています。業種別機能に加え、ロックウェル・オートメーションMESは、ERPシステムや工場フロアのオートメーションデバイスとスムーズに統合します。
毎日のように多くの新しいスマートデバイスが追加されていますが、これらのデバイスの全機能を活用している企業はほとんどありません。その一方で、ERPは成熟の領域に達しているため、潜在的な効率性のギャップが現れています。
MESは、特にスマートマシンやERPシステム、生産ラインにとって不可欠です。MESは各プロセスを相互接続し、オペレーションを中断することなく実行し、優れた業績を達成するために極めて重要です。
製造情報の強力なリンクおよび単一ソースとして、リアルタイム情報をいつでもどこからでも利用でき、プロセス実行および工場フロアの制御を提供することにより、製造メーカはMESを使用して生産品質を最適化することができます。
作業環境や労働力の変化に従って、製造メーカは直面する課題に対応し、オペレーショナルインテリジェンスを活用して、業務内容と効率を改善する必要があります。