バイオ医薬品メーカは、生産システムをより柔軟にかつ効率的にできるテクノロジを探しています。その回答はシングル・ユース・テクノロジです。
シングルユースのモバイルテクノロジの進化により、バイオ医薬品の生産はより柔軟かつ一段と利益が上がるものになりました。抗体、タンパク質、ワクチン、細胞治療、遺伝子治療はすべて、完全なシングルユースの全体プロセスでの製造から利益を得られる分子製造の例として挙げられます。
シングル・ユース・システムにより、洗浄および洗浄バリデーション(検証)を実施するのに必要な時間が低減し、そのため分析的品質管理コストの減少や施設の利用時間が改善し、全体の稼働コストを下げることができます。また、これにより製造メーカはある製品から他の製品、またはあるバッチから他のバッチへと、もっと容易にかつ迅速に切換えできます。
バイオ医薬品の薬剤の開発や生産にかかる多大なコストを考えて、バイオ医薬品メーカは生産システムをより柔軟に、スケーラブルに、より短期間に実装できるテクノロジを探しています。
その結果、シングル・ユース・テクノロジは生産性を上げるアプローチの主流として進化しました。シングル・ユース・バイオリアクタや使い捨てのクロマトグラフィーカラムから完全なシングル・ユース・ワークフローおよびバイオ製造施設まで、GEヘルスケア社はシングルユースの技術革新の最前線にいます。
プロセス制御とオートメーションの効率化
GEヘルスケアライフサイエンス社はロックウェル・オートメーションと協力して、プロセス制御、バイオリアクタのオートメーション、FlexFactory生産ライン、および世界中で使用されている輸送用コンテナベースのクリーン・ルーム・ユニットを効率化してきました。
GEヘルスケア社のバイオプロセスオートメーションおよびバイオプロセスデジタルのジェネラルマネージャであるケビン・シーバー氏は次のように述べています。「バイオテクノロジとバイオ医薬品プロセスは、ミルクからのラクトースの除去からパンやチーズの改良、インフルエンザワクチンの製造、妊娠テスト、および糖尿病治療薬まで私たちすべての生活に影響します。また、それらを利用して、がん細胞をターゲットとしてマークすることにより肺がんと戦うことのできるタンパク質を開発します。それにより、人体にもともとある白血球ががん細胞を攻撃し、一方、正常な肺組織を傷つけません。2022年までに、バイオ医薬品は処方薬市場の約30%を占めると予想されています。」
特に、製造メーカがバッファ溶液または細胞培養培地を生産している場合に、上流と下流の製造工程の両方で、シングル・ユース・システムの使用で利益を得られます。さらに、バイオプロセシングアプリケーションは、高分子製造プロセスや低分子製造プロセスにも対応します。プロザックのような従来の医薬品は原子が60個未満の分子から合成されるのに対し、インスリンのようなバイオ医薬品は何百という原子をもつ分子を持ち、単クローンの抗体は10,000以上の原子を持ち、インフルエンザワクチンは100,000以上の原子を持ちます。バイオ医薬品のこの複雑性は、これらの新しいバイオ医薬品の開発と上流と下流工程の生産を著しく複雑にし、高価なものにします。
シーバー氏は次のように述べています。「これらの高額の費用のために、コストがより小さな「バイオ後続品」薬を開発しようとしています。加えて、特許が切れると、他の製造メーカが特許の切れた医薬品を製造し始めます。バイオ医薬品市場のその他の変化の原動力は、個人化医療、ローカライズ製造、およびその他の新しいテクノロジなどです。
業界は下向きの価格圧力、市場導入期間の短縮圧力にさらされ、変化する市場の需要に迅速に適応しようとしています。例えば、細胞治療がここ4、5年の間に利用できるようになり、今や遺伝子治療が瞬く間に出現しています。ただし、新しい薬剤の開発には数年かかり、12億ドルから17億ドルもかかるので、医薬品製造メーカは4、5年先を見越してプラントを構築する必要があります。従って、たった1年または18ヶ月でシングルユースのバイオプロセス施設を実装できる場合、 バイオ医薬品製造メーカは生産に入る決定を後ろにずらすことができ、費用と時間の節約ができ、多くの不確定要素を回避できます。」
利益を生むコラボレーション
シーバー氏は、GEヘルスケア社とロックウェル・オートメーションの30年間にわたるコラボレーションは多くの利益を生み出したことと、FlexFactoryラインのバイオリアクタを最適化することについての、KUBioのモジュール式の医薬品製造工場(プレハブの輸送用コンテナ型クリーンルーム)で展開できる最近のコラボレーションは、さらにいっそう大きな利益をもたらす可能性があると報告しました。シーバー氏はまた、次のように述べています。
「私たちが標準的な2,000リットルのバイオリアクタを使用する場合、バッチを実行するたびに構築しなければならない300本のパイプ、ライン、および接続部があります。このようなアプリケーションを開発することは、1種類のプロセス制御を持つ小さなものから始めることができますが、スケールアップする場合、まったく異なるより高価な種類の制御が必要となる可能性があります。私たちはスケールアップするためのもっと良い、もっと一貫した方法を必要としていました。これが、ロックウェル・オートメーションとパートナを組んだもう1つの理由です。」
シーバー氏は、医薬品業界は非効率的な製造で一年に500億ドルも無駄にし、そのためバイオ医薬品企業はアクセスできない孤立したデータを解放し、データ収集とデータクリーニングに費やす相当な時間を削減して、同時にサイバーセキュリティ探査、侵入、攻撃に対し防御しようとしていますと付け加えました。
シーバー氏はさらに次のように述べます。「FlexFactoryが1つで、1日に1テラバイトのデータを生成します。そのため、データをより無駄にしないようにし、もっと活用する必要があります。」
適切なテクノロジの選択
バイオ医薬品アプリケーションのこれらの複数の課題に対応するためのGEヘルスケア社の戦略は「Figurate」と呼ばれ、オートメーション、柔軟性、効率および信頼性の活用が含まれています。シーバー氏は、以下のようなバイオプロセスの自動化の利点を追加しました。
- システムの冗長性のために最適化された稼働時間
- 共通フレームワークを使用することにより削減されたメンテナンス作業とトレーニング
- 一元管理されたデータトレンディングとアラーム機能による生産量の最適化
- GAMP実証済みおよびCFR準拠設計による規制違反の恐れの軽減
シーバー氏は次のように述べました。「加熱、撹拌、空気の追加、または、それ以外にこれらの1~200万バッチを処理する場合はいつでも、1つのシステムが故障すると取換えることのできる冗長サーバと冗長電源が必要です。また、これらのソリューションにより、トレーニングが共通化するので、規制違反の恐れを削減できます。」
シーバー氏は次のように報告しました。Figurateプログラムを開発し実地に移すために、GEヘルスケア社はロックウェル・オートメーションのPlantPAxプロセスシステムとソフトウェア、およびバイオプロセス機器を自動化するためにGE社のUnicornソフトウェアを採用しました。適切な製造実行システム(MES)アプリケーションと電子バッチレコード(EBR)と統合してデータを利用できるようにしました。また、それをクラウド・コンピューティング・サービスに提供しました。
GEヘルスケア社のFlexFactoryラインは、培地とバッファの準備、細胞培養の生産、回収、 精製、ウィルス排除、除菌、およびバルク製剤プロセスに対応します。これらすべては、モジュール式のKUBioクリーンルーム輸送コンテナで統合でき、GEヘルスケア社は現在、世界中でこれらのモジュール式製造設備を63箇所で稼働させています。
シーバー氏は次のように述べています。「すべてのテスト、電子機器、事前バリデーション、事前確認を実施でき、これらのユニットの準備が完了しているので、1年から18ヶ月でKUBioの中に入っているFlexFactoryを配送できます。これによ
シーバー氏は、プログラムからの利点は、生産スループット、可用性と生産作業効率の10~20%の増加も含み、さらにエネルギーの使用、廃棄物、バッチのリリースタイム、メンテナンス、ダウンタイムの調査が5~30%減少したことを付け加えました。
また、これらの利益をさらにいっそう確かにするために、GEヘルスケア社はロックウェル・オートメーションおよびPTC社と協力して、これらのツールの拡張現実(AR)バージョンを作成することをシーバー氏は報告しました。例えば、オペレータはARの画像のキャプチャを使用でき、pH、溶解酸素、二酸化炭素、制御キャビネットの性能、および重要なパラメータをより迅速に示す画像を表示し、操作できます。PTC社のVuforia Chalkソフトウェアでは、さらにオペレータとスーパバイザは画像をマークアップし、対応する必要のある内容を詳細に指摘することさえできます。
イノベーション曲線の先を行く
ロックウェル・オートメーションのライフサイエンス業界EMEA (欧州・中東・アフリカ地域)マネージャであるビリー・シスクは、バイオ医薬品の製造業で複雑さのレベルが大きく増加したことを説明しています。
ロックウェル・オートメーションは、シングルユースの市場のためのソリューションを開発して、エンドユーザ向け製品の市場投入に要する時間を短縮し、リスクを削減し、法規制の順守を強化するのを支援してきました。当社のテクノロジを使用してこのことを実現しています。
典型的なシングルユース環境では、すべてがEtherNet/IPを中心に構築されます。当社はシングルユースのソリューションの一部としてEtherNet/IPを採用しました。というのは、EtherNet/IPは機器にモビリティを与え、新しい各種機器の導入ができるからです。
ARはバイオ医薬品メーカにとって革命的で、人材管理を強化するだけでなく、品質を改善し、生産量を拡大し、製品の市場投入に要する時間も短縮します。
実際、さらに多くの企業がオペレータの関与する作業をサポートするために拡張現実を使用し始めています。ARや人工知能(AI)における新たな進化により、一連のタスクを通してオペレータが指示を参照することができ、その後、正しい接続がなされているかを検証することができます。これらすべてが携帯機器からできます。
その上、検証データは、証拠となる画像や動画記録と共に電子バッチレコード(EBR)で保管できます。