中小規模の生物製剤メーカが製造施設へのシングル・ユース・システムの導入を決断すると、続いてすぐにその他の重要な意思決定を次々に行なうことになります。特に施設を建設する場合に、最も影響が大きい選択肢の1つが、プロセス制御システムの決定です。
規格への準拠を容易にし、バッチ・サイクル・タイムを短縮し、より短時間で製品を市場に投入するため、これらの企業では生産工程の統合と情報主導型オペレーションが必要になります。これらは従来の大規模で統合された分散制御システム(DCS)に見られる機能です。ですが、そのようなシステムでは、シングルユース機器を使用する少量生産プロセスのニーズへの対応に必要な柔軟性が提供することはできません。
また、機器レベルのオートメーションも理想的な選択肢とは言えません。このアプローチでは各ユニットの操作が専用の制御システムとユーザインターフェイスを使用するため、システム管理者にとって困難な状況を生み出します。例えば、一元的なデータ収集やユーザアカウント管理を複雑にするオートメーションの点在化のような課題への対応が必要になります。
将来に向けた、より良いオートメーションへのアプローチがあります。最新のDCSを使用すると、製剤メーカはプラグ&プレイ機器を拡張性と柔軟性が高いセキュアなシステムに統合することができます。このようなシステムでは、最新のテクノロジ(産業用イーサネット、高速コントローラ、スケーラブルな分散ソフトウェアなど)と最新のプラクティス(サイバーセキュリティ規格)を使用しています。柔軟性の高いシステムに置き換えることにより、以下のことが可能になります。
- 時間の経過とともに稼働率が向上
- 規制要件への準拠
- 妥当性確認作業の軽減
- 新しいデジタルテクノロジとアナリティクスの統合
- 総所有コスト(TCO)の低減
そのような結果を出すためには、シングルユース機器に基づく新しい施設の建設の早い段階で、基盤を構築する必要があります。主なエリアでの適切な選択を設計段階で行なうことで、施設の寿命の全期間にわたってその効果を得られるでしょう。ここではそれらのエリアの2つについて概説し、その他の4つのエリアについてはこのブログのパート2で説明します。
ネットワーク基盤
制御システムの設計においては、まずネットワークインフラから取り掛かることをお奨めします。製剤メーカは、簡略化された接続とシームレスなデータアクセスによって施設の通信バックボーンがどの程度まで現在のニーズを満たし、将来的な運用およびテクノロジの変化に対応するために必要な柔軟性と拡張性を備えているかを十分に考慮する必要があります。
多くの製薬プラントで使用されている旧式のFieldbusネットワークプロトコルは、現在のシングルユース施設では困難な課題を生み出す可能性があります。例えば、デバイスや計器から貴重な診断データを取得する製剤メーカの能力が、データの制約によって制限される可能性があります。また、旧式のFieldbusは柔軟性に欠けるため、稼働期間が経過して新たな技術に対応するためにネットワークインフラを変更する必要がある場合に、メンテナンスや拡張が困難になる可能性があります。
EtherNet/IPなどの最新の産業用ネットワークプロトコルには、このような制約は存在しません。EtherNet/IPでは、シングルユースの機器および計器はプロセス制御システムとの通信を容易に設定でき、豊富な診断データをプロセス制御システムに提供できます。このような通信機能は、スイッチやその他のネットワークデバイスを通じてプラント全体のスケーラブルなイーサネットアーキテクチャに組み込まれています。このプラグ&プレイ接続により、シンプルなプラントアーキテクチャが形成され、ユニットを操作するための電力とイーサネット配線以外を必要とせず、システムの拡張や機器の交換が容易になります。
オペレーションの柔軟性
新しいバイオ医薬品の開発や臨床試験の早期段階では、製剤メーカは自動化のことまで考慮できない場合があります。自動化について考えるのに早すぎることはありません。その理由は、最適な自動化のセットアップは運用の柔軟性を大幅に改善し、技術転換に伴う多くの作業を軽減できるからです。
最新のDCSが搭載されたシングルユース機器に投資するバイオ製剤のスタートアップ企業を例にとって説明しましょう。機器は柔軟に一連のプロセスに組み込むことができ、初期の開発段階では手動で実行できます。そのため、プロセスの開発を進めながら設定を変更することが可能になります。
いったん商業規模の生産準備が整えば、ソフトウェアを大幅にアップデートすることなく機器を簡単に設定して反復可能なレシピを実行できます。これは、そのレシピが開発時に手動で実行した同じレシピから組み立てられているためです。人の介入が必要な問題が発生した場合には、機器を手動運転に戻すこともできます。
さらに、機器を別の目的で使用したり、異なるプロセスで使用することもできます。これは、機器を構成する個々のコンポーネントがフルセットの機能を備え、各コンポーネントが本質的に交換可能なパーツになっているためです。