グリーンエネルギーが鉱物需要に与える影響
国際エネルギー機関(IEA)の最近の報告書によると、世界的なグリーンエネルギーへのシフトは、化石燃料への依存を減らし、ネットゼロ目標を達成するために、銅、ニッケル、リチウム、コバルトなどのグリーンメタル(環境に配慮した金属)や鉱物の需要を高めています。これらの元素は、再生可能エネルギー技術、エネルギー貯蔵システム、電気自動車など多くの用途に不可欠な要素です。世界がよりクリーンでサステナブル(持続可能)なエネルギー源への移行を加速させる中、これらの重要鉱物の需要は急増すると予測されます。
しかし、グリーンエネルギーへの急務のシフトは課題ももたらしています。今後3~5年で、グリーンメタルや鉱物の需要は供給を上回り、大幅な価格上昇につながると予想されています。こうした資源の入手可能性は限られているため、鉱山会社は増産と最適化、サプライチェーンへのアクセスの確保、信頼できるバリューチェーンの開発を競っています。
世界のエネルギー転換におけるアジア太平洋地域のチャンス
アジア太平洋地域は、世界のエネルギー転換における重要なプレーヤーになりつつあります。中国、オーストラリア、インドネシアは、リチウムやニッケルといった重要鉱物の世界トップクラスの生産国であり、豊富な地質埋蔵量とこれらの鉱物抽出の専門知識を有しています。重要鉱物の需要が増加するにつれ、各国政府はこれらの鉱物へのアクセスを確保し、外部供給源への依存を減らし、サプライチェーンの混乱に対処するための緊急時対応計画を策定するために、政策や規制を導入または更新しています。これは、パンデミックや地政学的不確実性を受けて、重要鉱物のための立ち直りの早い信頼できるサプライチェーンを確立しようとする、より広範な世界的動きと一致しています。
例えば、オーストラリア連邦政府は、「重要鉱物戦略2023-2030」を策定し、オンショアリング(川下の加工・製造能力を拡大すること)を含むいくつかの方法で、この分野を成長させようとしています。そうすることで、オーストラリアはバリューチェーンをより多く獲得し、経済成長と雇用創出の両方に貢献できるサステナブルな産業を創出しようとしています。
「フレンドシェアリング」は、重要鉱物の分野で普及しつつあるもう一つの貿易慣行であり、グリーンな鉱物をより安定的に供給するために、各国が他の信頼できる国と協力し、同盟や協定を結んでいます。
インドや中国のような国々は、環境目標を達成するために再生可能エネルギーや関連技術に多額の投資を行なっており、アジア太平洋地域全体では、世界的なサステナビリティの目標に沿って、採掘や生産においてより環境に優しくサステナブルな慣行を優先しています。