お客様へのご提案
課題
- ポホクラ生産ステーションの施設を無人化すること
ソリューション
- オートメーションと制御の統合ソリューション
- MCC - 生産ステーションの制御用に2つの低圧モータ・コントロール・センタ(MCC)を設計・設置
- ネットワーク機能
- DeviceNet - 信頼性の高い通信を提供し、自動デバイス置換機能でデバイスのパラメータを自動的にダウンロードすることによりダウンタイムを低減
結果
- リモート運用
- オートメーションと制御の統合ソリューションを活用して、ポホクラ生産ステーションにおける常駐オペレータの排除を実現
- コストがかさみがちなダウンタイムをあらゆる手段で回避し、優れた制御と故障診断、ネットワーク機能を実現
- 優れた安全性と環境性
- 水平掘削で断崖の裏と海岸部の地下にパイプラインを設置することにより、地元の沿岸環境を保護し、優れた環境性を達成
背景
天然ガスは大変貴重な資源であり、他の化石燃料と比べて環境にやさしいクリーンな燃料です。また、天然ガスの生産量の90%は消費にいたるため、効率の良い燃料でもあります。そしてその効率は、採掘や輸送、貯蔵手段の技術的な進歩に伴い、高まり続けています。天然ガスの輸送システムは、採掘場所から需要の高い地域へと素早く効率的に輸送するために張り巡らされたパイプラインの複雑なネットワークで構成されています。
タラナキ沖にあるポホクラガス田は、シェル社とトッド・ポホクラ社、OMVニュージーランド社による合弁会社が所有するニュージーランド最大の天然ガス採掘場です。この生産ステーションはシェル・エクスプロレーションNZ社によって運営され、シェル・トッド・オイル・サービス社のサービスを利用しています。ポホクラガス田の天然ガスは、国の供給網に提供されています。このガス田の南側の陸上にある3基の「大偏距」掘削井戸から初めて市場向けのガスが採取されたのは2006年9月のことです。さらに2007年3月には、沖合の井戸5基のうち最初の1基でガスとコンデンセートの採取に成功しており、これらは海底のパイプラインを通じてモトゥヌイにある陸上の生産ステーションへと移送されています。
課題
施設を無人化し、ニュープリマスの制御室から運転状況をモニタできる機能を確立するには、エンジニア、コンサルタント、およびシステムインテグレータそれぞれの専門知識を結集する必要がありました。ポホクラの設計請負業者であるトランスフィールド・ウォーリー社は、長年のシステム・インテグレータ・パートナであるエンジニアリング・コントロール・リミテッド(ECL)社を指名しました。リモート運用の要件のひとつとして、ステーションからの情報を制御室にフィードバックできるよう、モータ・コントロール・センタをインテリジェントネットワークで主要プラント制御システムに統合することが求められていました。そこでトランスフィールド・ウォーリー社は、新しいシステムの基盤として、ロックウェル・オートメーションのDeviceNetネットワークおよびAllen-BradleyのControlLogix®プラットフォームを選択しました。
また、もう1つの要件として、400VのMCCおよびプラントの11kVの主配電盤における電力スイッチギアの状態を制御室で確認し、このスイッチギアの操作も制御室で行なえるようにするというニーズがありました。これは、スイッチギアをControlLogixのディスクリートI/Oに配線で接続することによって実現しました。離れた場所からスイッチギアを操作できるため現場で操作する必要性がなくなり、オペレータが危険(動作中のスイッチギアに故障や障害が発生した場合に起こりうるアーク閃光など)にさらされることもなくなるため、これは有益な安全機能でもあります。
リモート運用の確立
ポホクラではニュージーランドの天然ガスの45%以上が生産されており、このガスは北島全域に供給され、産業および家庭での消費にあてられています。「シェル社の専門技術を活用して、環境フットプリントを抑えながら信頼性の高い無人のガス生産ステーションを構築することを目指しました」と、ポホクラ生産施設の運用エンジニアであるポール・ブラウン氏は語ります。「そして、人員を危険にさらしたり近隣地域や環境に悪影響を及ぼすことなく、プロジェクトを所定の期限・予算内で安全に完遂することを重視しました。」
ポホクラ生産施設が目指したのは、常駐オペレータを排除して施設を無人化し、分散制御システム(DCS)を使用してニュープリマスのリモート制御室からプラントのオフサイト運用を行なうことでした。危険性のある機器に近づかずに済み人員の安全を確保できるという点で、リモート運用は理想的な手段ですが、運用の成功は、優れた制御と故障診断、ネットワーク機能に依存します。ロックウェル・オートメーションの産業マネージャであるプラサド・ノリは次のように説明しています。「DeviceNetは、信頼性の高い通信をサポートするネットワークソリューションを提供し、自動デバイス置換(ADR)という追加機能を通じてデバイスのパラメータを自動的にダウンロードすることによりダウンタイムの低減に成功しました。」ADRは、構成および自動アドレスリカバリ機能を備えており、保守の必要性を効果的に低減します。24時間年中無休で稼働するポホクラ生産施設では現在、月に一度予防保全の実施日を設け、潜在的な問題の特定および解決に取り組んでいます。
ポホクラ生産施設の青写真
トランスフィールド・ウォーリー社による電気的設計は、完全に統合されたソリューションの基礎となるものであり、その完成には配電盤類の大手メーカであるスイッチビルド社の能力が必要でした。ポホクラ生産施設のソリューションは、2つの低圧モータ・コントロール・センタ(MCC)の開発を中心に据えて展開されました。2.5MVAの変成噐2台が、4000Aのエア・サーキット・ブレーカ(ACB)を通じて1つ目の低圧MCCに電力を供給します。その後、1つ目のMCCから2つ目の低圧MCCへと電力が送られます。このインテリジェントMCCの設計には、DOL始動のモータスタータと通信して制御とモニタを行なうDeviceNetネットワークが活用されています。E3 Plusスマート過負荷が提供するモータ保護は、本来これよりもはるかに高価なモータ保護リレーによってのみ提供される優れた保護機能(地絡、ストール、サーミスタ、負荷の喪失など)に匹敵するモータ動作特性を実現します。
Allen BradleyのControlLogixプログラマブル・オートメーション・コントローラは、MCCに対する包括的なモニタおよび制御を提供し、分散制御システム(DCS)に情報をフィードバックする役割を果たします。「Allen Bradleyのソリューションは、高度な負荷保護を提供してくれます。お客様は、モータのパフォーマンスを分析して故障を特定するプロセスをすべて1つのユニットで一括して行ない、これらを分散制御システム(DCS)で視覚できるようになったのです」と、スイッチビルド社のマネージャであるドナルド・リデル氏は述べています。
ECL社は、ポホクラにおけるコストがかさみがちなダウンタイムを回避するため、2つの11kVの新機器のうちいずれかからの電力が失われた場合に備え、PACにおける切換え制御の開発・導入に取り組みました。ECL社のエンジニアであるピーター・ハイテマ氏は次のように述べています。「電源の切換え時には通常大なり小なり電力の喪失が起き、少なくとも数ミリ秒間モータがシャットダウンします。これを避けるため、モータが損害を来すことなく何秒にわたって無電力状態でいられるかを突き止めました。結論としては、もう一方の電源に切り換えるための時間として最大1.5秒間、イナーシャを利用してモータが動作を継続できるようにしたのです。この情報を制御システムにプログラムしておくことで、コストのかさむシャットダウンを回避することができました。」
優れた環境性
最先端のエンジニアリングを採用することで、ポホクラのプラントのリモート運用が実現しました。「リモート運用においては、これまで以上に人員と環境の安全を優先する必要があるため、プラントやコンポーネントは最小限の保守で信頼性の高いパフォーマンスを発揮しなければなりません。ですからポホクラのプロジェクトでは、信頼性が実証されているコンポーネントのみを選択する必要がありました」と、ポホクラ生産施設の運用エンジニアであるポール・ブラウン氏は説明しています。
優れた環境性を達成するため、ガス田の設計そのものに改良が加えられました。誘導式水平ドリル工法を使用することにより、陸上の生産ステーションから海洋プラットフォームまで、断崖を越えて海岸部を横切るようなパイプラインを設置する必要がなくなりました。かわりに断崖の裏と海岸部の地下にパイプラインを設置するというニュージーランドでは初の試みがなされたため、目障りな物理的設備が視界に入ることもなく、地元の沿岸環境も保護することができました。
プラントの処理エリアはコンクリートの堤防で囲まれています。雨水処理システムに水が流れ込む前に、浮遊している残留炭化水素を吸収体スキマーが取り除きます。雨水はその後、特別に造成された湿地でさらに処理され、ここでは植物が天然の生物濾過器として機能します。この湿地での濾過により、残留炭化水素がすべて取り除かれます。こういった環境への配慮が評価され、シェル社のポホクラ生産施設は、2010年にタラナキ地方議会からサステナブルな開発・技術革新賞を授与されました。
ロックウェル・オートメーションが提供したオートメーションと制御の統合ソリューションに対する反応も良好です。ブラウン氏はこう締めくくっています。「ポホクラ施設はあれから5年間操業を続けていますが、その間ロックウェル・オートメーションのPACには何の問題も起きていません。予算やスケジュール、人員の安全、環境のサステナビリティに関する我々の目標はすべて達成されました。」リモート制御によるポホクラ施設の運用は成功し、多大な価値がもたらされました。これを受けて同施設は現在拡張工事に取り組んでおり、ロックウェル・オートメーションのIntegrated Architecture (統合アーキテクチャ)システムによる簡単に拡張可能なソリューションを再び活用してもう1つのプラントの構築を目指しています。
公開 2013/05/01