2020年にCOVID-19のパンデミックが世界的に急速に広まると、N95マスクの需要が供給を上回るようになりました。グローバルなサプライチェーンは消滅しました。また、それまでマスクの大半を輸入していた国では、医療現場のニーズに応えるだけの国内製造能力がないことがすぐに判明しました。
メルトブローン不織布は、N95マスクや濾過材に欠かせない素材です。ポリプロピレンを原料とするこの高機能素材は、厳しい濾過仕様を満たすように設計されています。
キャットブリッジ・マシナリー社の社長であるマイケル・パパス氏は次のように述べています。「当社の専門分野の1つはメルトブローン生産ラインを含む不織布加工です。当社は、材料不足に対応できるソリューションをパッケージ化する作業にすぐに取り掛かりました。」
キャットブリッジ・マシナリー社は、ニュージャージー州モントヴィルに本社を置き、織物加工機械と独自のターンキーソリューションを提供する世界的なリーディングサプライヤです。現在、北米でターンキーのメルトブローン生産ラインを提供しているのは同社だけです。
専門知識をいかして
パンデミックが発生するずっと前から、キャットブリッジ・マシナリー社はコンパクトな装置とマルチビームのメルトブローン装置の両方をラインナップしていました。さらに、このプロセスの重要な要素を含む、トレードショー用の小規模なパイロットラインも開発していました。
パパス氏は次のように述べています。「私たちのソリューションには、常にある程度のカスタマイズが必要です。今回は、これまでの経験をいかして、N95マスク用の素材をパッケージ化しました。」
一般的な濾過材の規格を満たすために、同社は織物の幅1.6メートル(5.2フィート)のソリューションをパッケージ化しました。ターンキー生産ラインは、メザニンレベルとプラントレベルの両方の機器を備えており、押出成形、メルトブローン成形システム、織物処理装置、すべての機械的接続、制御パッケージ、電気パネルが含まれています。
複雑な工程
この工程は、まずメザニンレベルでポリプロピレンのペレットが押出機に投入され、約240°C (470°F)に加熱されます。液化したポリマーの一本のビームが、極小の穴がいくつも開いたダイアセンブリに送り込まれます。
同時に、穴の出口の両側に高速の熱風を吹き付けて、繊維を伸ばしたり、減衰させたりします。フィラメントが冷却されると、下の階にある真空テーブルと織物処理装置に引き寄せられます。
パパス氏は次のように説明します。「極めて細いポリマーを真空テーブル上に連続的に噴霧し、網目状にします。これにより、空気を通過させつつ、多くの微粒子を捕らえることができるフィルタの素材ができあがります。」
パパス氏はさらに付け加えました。「濾過を最適化するために、織物も静電気を帯びています。その結果、さらに多くの粒子を捕捉できるように素材は「静電吸着」します。」
素材は最終的に搬送され、スリットされ、巻取られて出荷されます。
パワフルな制御 - ソースで
メルトブローン生産ラインは、Allen-BradleyのGuardLogix®セーフティコントローラおよびAllen-Bradley Kinetix®サーボドライブとモータを搭載したロックウェル・オートメーションの制御プラットフォームで稼働しています。システムはEtherNet/IP™ネットワークで統合されます。
パパス氏は次のように述べています。「通常、当社では機械のHMIにグラフィックターミナルを使用します。しかし今回は、Allen-BradleyのVersaView®産業用PCおよびモニタを選択しました。」
堅牢なVersaView製品は、アプリケーションのソースでより多くのコンピューティングパワーを提供し、画面から何にアクセスして管理できるかという柔軟性を提供します。このケースでは、システムにFactoryTalk® View Site Edition (SE) HMIソフトウェアが搭載されており、複数の関係者の要求を満たすことができます。
オペレータは、表示画面、アラーム、システム全体の診断に簡単にアクセスできます。また、メンテナンスやエンジニアリングについては、アプリケーションを迅速に開発し、システムのメンテナンスを容易に行なうことができます。
モジュール化の美しさと俊敏性
キャットブリッジ・マシナリー社は、N95マスク材料の即時的なニーズに対応できるターンキー生産ラインをパッケージ化することに加えて、簡単に拡張できることと機械の柔軟性を重視しました。
パパス氏は次のように述べています。「メザニンレベルのビームアセンブリ全体は、独立したモジュール式になっていて、簡単に拡張できるようになっています。お客様は、ポリマービームや成形テーブルを追加するだけで、生産能力を高めたり、独自のブレンドを作ったりすることができます。」
実際、最初のN95マスク製造ラインを購入したお客様からは、生産量を増やすために2本目のビームを追加したいという要望が寄せられています。
また、メルトブローン生産ラインは容易に切換え可能な構造になっています。
パパス氏は次のように述べています。「私たちが過去に仕事をした企業の多くは、1つの製品だけを生産しているわけではありません。自動車用の空気濾過材、吸水性のあるワイプやマスクなどに取り組んでいるかもしれませんが、これらの製品にはそれぞれ固有の繊維が求められています。」
別の製品を動かすには、通常、ダイの構成を変更する必要があります。通常、機械的な変更はダイチップの取り外しと交換のみです。それ以外の調整は、オペレータインターフェイスからレシピを変更することで行ないます。
パパス氏は次のように述べています。「COVID-19のパンデミックは、多くの人にとってジェットコースターのようなものでした。N95マスクはいまだに不足していますが、これから何が主流になるのでしょうか? 私たちには分かりません。このような不確実な時代には、機械の柔軟性は性能と同じくらい重要です。」