お客様へのご提案
課題
- ライセンスを確実に更新するために規制要件に適合する。
- 水力電気を追加的に生成するために新設の発電所を完全に自動化する。
- 同一施設で魚道と水力発電を統合する。
ソリューション
- モータ制御を統合したロックウェル・オートメーションのIntegrated Architecture™ (統合アーキテクチャ)システム
- ControlLogix PAC - 魚収集施設と無人発電所を正確に制御
- PowerFlexドライブ - 魚の巻上げ機をスムーズに操作
- ProSoft ModbusとDNPプロトコルカードでシステム間の通信をシームレスに
結果
- 水力発電が3.6メガワット増大
- リモートによるモニタと制御で運用コストを削減
- 再生可能エネルギーの導入拡大により、税額控除額が増加した
- 流量ランピングの自動化
- 流量の違反リスクが低下した
背景
水力発電は米国の重要な発電基盤です。1880年代から、エンジニアたちは水力で発電機を動かして電力を生みだす力を利用し、有名なフーバーダムや小規模な水力発電プロジェクトを開発してきました。
しかしここ数十年で、水力発電がもたらすメリットとは裏腹に、ダムが現地に生息する魚の個体数などの環境に与える影響が認識し始められています。サケやニシンなどの種は海洋から河川へと回遊し、産卵します。孵化した稚魚は再び河川を下り、そのまま海へと戻っていきますが、従来のダムは川から海への自由な流れを遮断するため、このライフサイクルは破壊されてしまいます。
連邦および州の規制機関はこれらの個体群を復活させるため、魚がダムを迂回できる革新的な方法を開発するよう公共施設に求める対策を講じました。ワシントン州のタコマ・パワー社も例外ではありません。タコマ市が所有するこの電力施設は、同市の半数以上の住民に電気を供給しており、そのうち90%のエネルギーは、ワシントン州西部の河川にある水力発電所で生成しています。
市への電力供給を認可するタコマ・パワー社のライセンスは更新時期を迎えており、このライセンスを更新するには2つのダム周辺に魚道を作り、絶滅危機に瀕するスチールヘッドやベニザケ、サケを保護する必要がありました。
課題
同時、ノース・フォーク・スココミッシュ川上流にあるタコマ・パワー社のクシュマン第二ダムには、同河川のノースフォーク流域に水力発電を供給できる機能が備わっていませんでした。このダムは人工貯水池であるクシュマン湖内の水を維持するためのシステムの一部として1929年から設置されています。
1992年、同電力会社は湖から河床への水の流れを確保するためにダム直下に2つの放流弁を追設しました。しかし、弁を通過する水の流れが強すぎるために魚は回遊できませんでした。穏やかな魚道を提供するには、上流に遡上する成魚と海に向かう稚魚のために魚収集施設を建設する必要がありました。
水流を放散する必要があった同社は、ダム直下に発電所を新設すれば、水流の力を利用してそれを水力発電に変換できるのではないかと考えました。
周辺地域に洪水が発生しないよう安全を確保しながら魚の回遊を管理するには、河川の自然な流れを再現する必要があります。タコマ・パワー社が所有・運営する他の発電所と同様、現場スタッフの必要性をなくすにはクシュマンノースフォーク発電所を完全に自動化し、スタッフがタコマオフィスの指令センターからダムにリモートでアクセスできる体制を整える必要がありました。
また発電所は1700軒の一般家庭に再生可能エネルギーを供給するため、お客様にもメリットがもたらされます。
ソリューション
タコマ・パワー社が7つの他の発電所の自動化に採用したのが、Allen-Bradley®のControlLogix® プログラマブル・オートメーション・コントローラ(PAC)です。
「Allen-Bradleyの制御を利用してきた経験から、この新しいプロジェクトにも同じソリューションを導入したいと思ったんです」と、タコマ・パワー社のジェネレーション・オートメーション・スーパーバイザであるオザン・フェリン氏は語ります。
フェリン氏と同社の他の制御エンジニアは、4台のControlLogix PACを使って無人化システムの設計に取り組みました。2台のPACが2台の1.8MW発電機ユニットのいずれかをそれぞれ制御し、3台目のPACはユニットトリップが発生した場合に既存の放流弁を操作して連続的な流れを確保する、バランス・オブ・プラント(周辺の諸設備)の制御に対応。4台目のPACは発電所のすぐ外側にあるダム直下の魚収集機器と魚の巻上げシステムを制御します。
この新しいシステムでは、オペレータはプラントの単一フロー制御定値を使って発電所を制御します。バランス・オブ・プラントのPACが制御定値を受信すると、規定速度の流れを得るために各発電機ユニットと放流弁にフロー指示を自動的に発令し、季節的な河川の流量を再現します。プロソフト社のDNPカードとModbus®カード、ロックウェル・オートメーションのEncompass™製品パートナ、ロックウェル・オートメーションのPartnerNetwork™プログラムのメンバーが、インターフェイスでノースフォーク発電所のセンサや機器、その他のシステムに接続し、複数のプラットフォームをまたいだシームレスなイーサネット通信を提供します。
発電機のどちらか一方または両方がオフラインになった場合、バランス・オブ・プラントのコントローラが流量の低下を補うために放流弁を即座に開放し、一定流速で水流を維持します。
魚収集施設については、タコマ・パワー社のエンジニアリングチームはダムを超えて成魚を遡上させ、スモルトをダム側面にスムーズに移動させる巻上げ機を設計する必要があり、これには高精度な制御を備えたドライブが不可欠でした。
この制御はダム直下から始まります。魚がダムに向かって泳ぐと、魚収集施設のホッパーに十分に成長した成魚が引き寄せられ、Allen-BradleyのPowerFlex® 700 ACドライブが操作するトラムでダムの脇に自動的に巻き上げられます。ドライブに搭載されたAllen-BradleyのTorqProve™機能を使用すれば、ドライブとトラムの機械式ブレーキ間の制御を移行する際にホッパーを簡単にコントロールできます。
ホッパーでダム頂部に持ち上げられた魚は、そこで分別およびカウントされ、トラックでクシュマン湖へと輸送されます。魚収集機器の操作にはPowerFlex 70ドライブと組合せスタータを使用します。
一方、海に向かう稚魚はダム頂部のホッパーに収容された後、スモルトのリリースカートに運び下ろされ、海側の下流に放流されます。
タコマ・パワー社の制御エンジニアは、Allen-BradleyのDriveTools™ SPソフトウェア、Rockwell Software®のStudio 5000 Logix Designer™プログラミングソフトウェアでPowerFlexドライブをプログラムしました。エンジニアはアドオンプロファイルとしてStudio 5000 Logix Designerプログラムにドライブを直接追加できたため、ControlLogixコントローラのプログラムに使用するソフトウェアであるStudio 5000 Logix Designerアプリケーションにドライブのパラメータが自動的に統合され、これがプログラミングにかかる時間の削減につながりました。
「他の制御ソフトウェアも試してみましたが、私たちが求めるあらゆる制御ニーズに対応するソフトウェアはどれも、Studio 5000 Logix Designerソフトウェアほどの使いやすさは備えていませんでした」と、フェリン氏は語ります。「コントローラをプログラムするときと同じソフトウェアを使ってドライブパラメータをプログラムし、保存できるため、立上げにかかる時間を削減し、ドライブパラメータとコントローラプログラムを単一のファイル場所に保存できます。」
またタコマ・パワー社のチームは、ロックウェル・オートメーションのI/Oカードを活用して、タコマオフィスから温度や機器のステータスのモニタや、機器の制御をリモートで実行しています。
結果
収集施設により魚の回遊ルートは復元し、同社は2048年までタコマ市での発電を許可するライセンスを取得しました。さらに同社は、新設発電所の稼働目標として掲げていた、3.6メガワットの水力発電の増大も達成しました。
発電所は無人化されたため、オペレータにかかる追加コストも回避できました。「制御センターからボタンひとつで流量を調節できるようになりました。手作業による操作よりも正確ですし、現場スタッフにかかるコストも削減できます」と、フェリン氏は述べています。
システムの導入により、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)が定める流量要件への違反リスクも低減しました。ユニットがトリップするとバックアップの放流弁が自動的に開放されるため、コンプライアンス基準により効果的に対応することが可能です。さらに同社は、再生可能エネルギーを製品ラインに追加したため、州から再生可能エネルギークレジットを受取ることができます。
魚の個体数をさらに増加させるため、タコマ・パワー社はクシュマンリバー計画下で2つの孵化場の新設に取り組んでいます。1つ目の孵化場では年間200万匹のベニザケ、2つ目では42万5000匹のサケとスチールヘッドの幼魚を飼育し、その後、すべてクシュマン湖に放流する予定です。
ここで紹介した成果は、タコマ・パワー社でロックウェル・オートメーション製品およびサービスをその他の製品と併用した結果です。実際の成果は事例ごとに異なる場合があります。
公開 2015/12/14